「美女と野獣・・・」-48
「あっ!」
あったあった!これぞ乾杯に適したジュース!
小さい頃、クリスマスとなると必ず家にコレが用意されてたっけ。
一見シャンパンの様にも見えるその瓶が、
無邪気な子供をおませな子供に仕立て上げ、
大人にでもなった気分に酔いしれさせたものだ。
その時、鋭い悪寒が全身を襲った。
フワリと舞い上がったフリルのスカートが、
重力によって再び元の位置までスッと戻ってくる。
すかざず後ろを振り向いた。
誰もいない。
という結果の方がまだ嬉しかった。
クルッと振り向くとそこには宇宙人がボーッと突っ立って私をもろに凝視している。
何?この人・・・!
いや、何?この宇宙人・・・!
スカートめくったんならサッサと逃げるなり隠れるなりしてよ・・・!
何で不気味にそこに突っ立って不気味に私を見つめんの・・・?!
笑いもしないし、にやけもしない。
ほくそ笑みもしなけりゃ、薄ら笑いもしない。
怖っ・・・ホントに宇宙人・・・?
反転してガラスの扉を開け、シャンメリーの瓶を2本持って早足にレジへと向かった。
振り返るとさっきの赤い髪の宇宙人はまだあの場所に突っ立って、
しかもそこから私を見つめ続けていた。
身体の芯から震えがこみ上げてくる。
千円札を投げる様にして払い、お釣りを受け取らずに店を出た。
蘇る昔の記憶。何を考えてるのか分からない。男が信じられない。人間が信じられない。
見ず知らずの他人によく触れるものだ。
もう後ろは振り返らない。記憶もそう。現実もそう。
前へ進むしか道は無い。だってSくんは前にいるんだもん。
ビニール袋の中でシャンメリー同士が激しく何かを言っている。