「美女と野獣・・・」-47
草むらを抜け、暗がりの中で煌々と輝くローソンの明かりが眩しかった。
すかさず表にあった公衆電話へ歩み寄り、自宅に電話する。
「・・・・・あ、お母さん?私。・・・うん。・・うん。・・・ゴメンね。」
受話器を持ち、会話しつつも、閑散としていたコンビニが
ふと賑やかになるのを感じた。
辺りを見回すと、明らかに自分の鼓膜を破らんばかりの大音量を奏でる車が
一台こちらにやってこようとしていた。
「・・・うん。・・分かった。花火は終わったからもうすぐ帰るから。・・・え?・・・うん。」
その喧しい車はローソンの駐車場に停まり、
中から宇宙人が3人降りてきた。
かと思ったが、良く見ると人間だった。
鼻から耳にかけて鎖の様なモノがぶら下がっている。
唇や耳にはいくつものピアスが連なっていた。
お洒落なんだかギャグなんだか知らないが、
3人の頭は赤、黄、緑と、ド派手に染められ、
ちゃんと並ばなくても信号機を連想する事が出来る。
けたたましい爆音は無人の車内で今もなお鳴り続けている。
「・・・え?ゴメン。ちょっと周りがうるさくって・・・うん。・・え?・・・分かった。」
目を合わさない様にしているが、宇宙人の視線が強烈すぎるのか、
気持ち悪い位に視線を感じる。
靴をズカーズカーッと引きずってローソンの中に入っていったのが分かった。
「・・・もう帰るから。・・・え?・・・分かった。気をつけるよ。うん。・・じゃぁね。」
適当な嘘を付いて家を出てきたが、怪しむどころか喜んだお母さんをみて
心なしか切なくなった。
それほど完全に友人関係を遮断し、外出する事を長年拒んでいたのだ、
という事を思い知ったのだ。
だからなのか、随分遅い時間だというのにお母さんは全く怒っていなかった。
電話を切り、宇宙人のいるローソンへと恐る恐る入る。
乾杯といったらビールだろうが、酒は買ってくんなよ!とSくんに念押しされた以上、
無理に買っていく訳にはいかない。
ジュースが立ち並ぶ冷蔵庫の前まで行き、
乾杯に見合ったジュースとやらを見つけようと膝に手を付いてガラスの中を覗き込む。
そんな万能なジュースがあったら是非買い占めたいものだ。