「美女と野獣・・・」-45
「・・・辛かった過去は・・・・・」
考えに考え抜いて出た答えがコレだからホントに参る・・・。
「オレと一緒に塗り替えよーぜ。」
オレにRを慰める事は出来ないと思った。
過去は過去。消去が出来ればオレは一体何回消去するだろう・・・。
だがオレはRの未来を変えられる。
「今までの不幸の分はさ・・・」
これまた考え抜いた挙句の果てに出た言葉だからホントに呆れてしまう・・・。
「これからの幸せが穴埋めしてくれるんだよ。・・・・・オレがね。」
気温も肌寒いが、オレの方が遥かに辺りを冷やしたかと思った。・・・・が、
「・・・プッ!」
おや?
「・・・ぁははははは!」
見るとRが満面の笑みで笑っている。
「・・・優しいんだね。Sくん。」
「これは優しいぶってるイジメじゃぁねーよ?」
「そんなの分かってるよ。」
「過去なんて関係ねーよ。オレはお前が好きなんだから。」
「・・・・・」
「・・・だからオレと・・・・・付き合って下さい!」
意味不明に敬語になった。
「・・・・・私からも・・・お願いします。」
ッシャーーー!!
心の中ではそう叫んだが、現実には笑みだけ見せて手を差し伸べるだけに留めた。
オレの右手とRの右手で握手する。
初めてRに触れた瞬間だった。
すべすべして柔らかい無垢なRの手。
「お祝いの乾杯しよっか。ね?」
「いーねー!・・でも、時間ヘーキなん?」
「せっかくだから乾杯しよーよぉ。そしたらすぐ帰ろ?」
「分かった分かった!じゃあそこのコンビニで・・・」
腰の高さほどまでボウボウと伸びた草の先端の隙間から、
陸橋の手前にローソンがあるのが見えた。
「私が買ってくるよ。」
「は?オレも行くよ。一緒に行こーぜ。」
「家にも電話しないといけないしさ。男の声がするだけでヤバいんだ。」
「けど危ねーから一緒に行くよ!オレが黙ってりゃ・・・」
「すぐだからヘーキ!ちょっと待ってて。ね?」
「・・あ、あぁ。分かったよ・・。酒は買ってくんなよ?」
「わかってるってー!」
Rは既に歩き出し、後ろを振り返りながら笑顔でそう言った。
あぁ、なんて可愛いんだ・・・
クルッと前を向いた時、フリルのスカートがフワッとなった。
きっと今日だって相当無理してあーいう服装を着て来たんだろうな・・・
オレの為に・・・ふはは!
腹の底から笑いがこみ上げてきた。
さてさて、新学期が始まったらどうしよう・・・
周りのヤツラ、驚くだろーなぁ・・・
驚きはしないか・・・
仲良かったからな。ウチラ・・・
しかしまさか付き合うとは思ってねーだろう・・・!
イジメなんぞオレが許すか!バカ共め・・・!
いや、変わり果てたRの姿に恐れおののくかも・・・あははは!
オレはたった一人しかいない河原で物思いにふけっていた。
これから訪れるオレとRのハッピーロードを。
しかしそのロードが訪れることは無かった。
心の底から祝う乾杯すらも。