「美女と野獣・・・」-37
「・・・私ね・・・実はイジメられてたんだ・・・。前の学校で。知ってたと思うけど・・・。」
「知らねーよそんなの。高校生がイジメ?!そんなバカが実際にいるんだ。」
「こーゆー性格だからね。しょーがないよ。・・・イジメは中学からずっと。もう長い付き合い。あはは。」
その時Rから笑いが出たのが唯一の救いだ。
それがたとえ作り笑いだとしても。
「けど・・・、けどさぁ、オレとは普通に話してくれてるじゃん。普通に明るいじゃん。」
「Sくんだけだよ。笑って話せるの。」
初めて名前で呼ばれた。
今まで電話で仲良く話しをしてはいたものの、
何故か不思議と名前で呼ばれる事は無かったから、
それがたとえ低いハードルだったとしても、一つ飛び越えたのは確かだ。
「・・・私ね、・・・ずっと人間不信だったの・・・。」
いつだったかRの制服が無くなった時と同じく、
Rを慰めるべく良い言葉が見つからない。
「・・・死んでも誰も悲しまないかな・・・って。」
オレは昔イジメをした事があるが、イジメられた事は無い。
イジメられた人にしか、その辛さは分かるハズがない。
イジメてた人は、イジメられなければイジメをやめる事は無い。
冷静に考えれば分かる事だが、
人間は冷静に考える時間というのを大切にしていないと思う。
「悲しむっつーの!オレが悲しむっつーの!Rが死んだらオレが悲し・・・」
「うふふ。昔の話だよ。今はそうは思わない。でも嬉しかった。ありがとうね。」
顔は笑っていたが、心のどこかで何かが引っ掛かってる様な、そんな笑いだった。