「美女と野獣・・・」-32
その11
夏休みに入ると、オレとRはちょくちょく連絡を取り合う仲に発展していった。
初めのうちこそは家に電話を掛けると驚き呆れ、
学校にいる時よりもオドオドした口調で会話のキャッチボールがなっていなかったが、
次第に慣れ、2日に一度のペースで夜な夜な電話で話していると
お互い笑いが尽きる事無く延々と長電話をする様になっていった。
オレのRに対する気持ちは段々と膨れ上がり、
それと同時にRもまた、オレに気があるのではないか?と思ってしまう程
和気藹々なトークを繰り広げるのだった。
そんなある晩、いつもの様に笑いの尽きない電話をしている最中に
オレは勇気を出してRを誘ってみた。
「ねぇ、今週末とかって会えねーかなぁ・・?」
「えっ?!」
ごくごく自然な口調で、ごくごく自然なノリで聞いたつもりだったが、
Rの反応がいつにも増してクソ長く感じる。
「・・・うん。いいよ!」
ッシャーー!!
独りでガッツポーズをとった。
「3週間ぶりだね。会うの。どこに連れてってくれるの?」
「え?・・・あぁ、えーっと・・・どこにすっかな・・・はは!考えてなかった!はははぁ!」
計画も何も立てずにノリで誘ってしまったので、つい答えに戸惑う。
「今度の土曜日に多摩川で花火大会やるらしいからそれ行こっか。ね?」
「おぉ!いいねぇ!それ行こう!ソレ!!」
なんてタイミング!
神様サンキュー!!
毎日毎日クソ暑いグラウンドでサッカーに明け暮れている日々だったが、
週末の花火大会までが待ち遠しくて仕方なく、
この時ばかりはさすがに部活に精を出す事が出来なかった。