「美女と野獣・・・」-24
スカートは膝丈、靴下は普通のハイソックス、更に髪の毛は真っ黒、パーマもかけておらず、
更には顔も化粧っ気が全く無く、マスカラも無し、アイシャドウも無し、チークも無し、口紅も無し。
おまけにべっ甲の様な茶色い縁の眼鏡まで掛けてる始末だ。
私、女子高生でーす路線組とは別に、
高校生になっても中学生気分なのかなんなのか、
ミニスカートでもなく中途半端な膝丈スカートに普通のソックス、
黒髪で洒落っ気の無い髪型の、いわゆる地味路線組が各クラスに数人ずつ位いるが、
Rは誰が見てもその地味路線組だというのを、誰一人疑わなかった。
席が前後という事もあり、オレはRと話す機会が他の誰よりも多かった。
といってもまともな会話ではなく、ちょっとした問いかけや軽い挨拶程度のものだが、
それにしても転校してからこの数日、Rは未だに仲の良い友達も出来ず、
休み時間であっても自分の席から立たずに何をする訳でも無くボーッとし、
昼食の時間であっても誰かと一緒に弁当を食う訳でもなく、
これまた自分の席で一人で食すのであった。
クラスの男子達は、どう考えても女子高生の身なりをして元気一杯に振舞っている
明るい女子を好むのが当然と言えば当然だが、
クラスの女子達は何故Rと仲良くならないのだろうか、とふと疑問に思った。
飯くらい誘ってやりゃぁいいのに・・・
転校生なんだからきっと馴染めずにいるんだろう・・・
前の学校でもたぶん地味路線のダチしかいなかったんだろうな・・・
そんな勝手な妄想をしつつも、オレが何をしてやるワケでもなく、日々が過ぎていった。
ある時、オレはRの眼鏡の奥に秘められた素顔を目撃する。
素顔といってもいつも化粧をしていないRの顔が素顔なのだが、
何かのきっかけで後ろを振り返り、黙々とノートに何かを綴るRの顔を凝視し、
まつ毛から瞳から鼻筋から口元から、顔の隅から隅に至るまで、舐める様にジロジロとつい見入ってしまった。
何らかの強烈な視線に感づいたのか、Rがふと顔を上げると、オレとモロに目が合い、
オレは慌てて前を向き直すのだが、今さっきまで見つめていたRの素顔が気になってしょうがない。