Ethno nationalism〜決断〜-6
「お前達!見張ってないのか!」
その凄まじい剣幕に三島は亀のように首を縮込ませる。
「…す、すいません。GPSがあれば大丈夫かと思って……」
「ヤツは佐伯が殺されたのを知っているんだぞ!次は自分だという事くらい分かってる!
だったら身を守るために様々な手を使ってくると分からないのか!」
マッケイは怒りを露にして、一気にまくし立てた。
「すいませんでした!」
三島は今にも泣き出しそうな声で何度も謝った。
その姿を見て、マッケイは深くため息を吐くと、
「…もういい。とにかくパッドに急げ」
クルマはスピードを上げて闇の中に消えていった。
国体道路を西に進むと、両サイドに巨大な商業ビルが立ち並ぶ。
その道から1本右の道に入ると、昭和30年代から時が止まったかと思わせるような、細い路地と古く小さな家々が密集する地域に出くわす。
その途中でクルマは止まった。ヘッドライトに映し出されたのは、廃墟のような2階建てのアパートだ。
マッケイはクルマを降りると、その敷地内へと入って行く。
アパートは誰も住んで居ないのか、明かりがついていなかった。
その1階の真ん中の部屋のドアーフォンを押した。だが、音は漏れて来ない。
ドアーの覗き窓と、斜め上の隠れた場所にセットされた小型カメラが、〈訪問者〉を仲間かどうか識別する。
重々しい音と共にドアーが開く。厚さ10センチは有るだろうか、外観と違い中は明るい色調で、普通のアパートと変わりない。だが、妙な圧迫感があった。
見た目には分かりずらいが、壁や天井には分厚い吸音材が使用され、音を外に漏らさない構造になっていた。
また、奥の部屋は入口の部屋とは違い、暗い色調で統一されていた。
まさにそこは、佐伯が殺害された場所だった。
マッケイは部屋に入るなり、待っていた男2人に平手を浴びせる。
男達は勢いよく床に飛ばされた。
「さっさと佐伯の携帯を持って来い!このウスノロ野郎!」
後から入って来た三島は玄関前でたじろいだ。
慌てて持って来た佐伯の携帯を、奪うように手にしたマッケイは、アドレスを検索して藤田の番号を確かめると、自身の携帯ボタンを押した。
呼び出しのコール音が続く。マッケイは執拗に呼び出しを続ける。
〈カチャッ〉と言う接続音。マッケイは一転、明るい口調で話しだした。
「ナオッ!私だ、チャールズ・オブライエンだ。先日の取材の件で2、3尋ねたいんだが……」
早口の英語で話すマッケイ。対して相手は黙っている。
マッケイは続けた。