Ethno nationalism〜決断〜-5
「すまない。貰っていくよ」
「いいか、間違っても平常時に噛むなよ。心臓が爆発するからな」
「分かった…」
藤田はカプセルをジャケットの内ポケットにしまうと、席を立ち上がった。相川も立ち上がると右手を差し出した。
「…前にも言ったが、今度はもっと楽しい話を持ってこいよ」
相川は薄く笑った。藤田はその手を握りながら、
「そうだったな。結婚式の招待だったな……」
藤田も辛そうな笑顔だった。
2人は食堂を離れ、廊下から玄関ロビーへと出てきた。
そこで止まり、藤田は出口を背にして相川に言った。
「頼んだぞ」
「ああ……」
そして、踵を返すと振り返らずに出口を後にした。
相川は、その姿が見えなくなるまで、その場に佇んでいた。
ー夕方ー
アラン・マッケイは福岡空港国内線ロビーを歩いていた。事前の連絡から仲間が迎えに来ているハズだからだ。
「恐れ入りますが、ヘブロン商会のアラン・マッケイさんでしょうか?」
マッケイは声のした方を見る。50代だろうか。背は低く、白髪頭を短く苅込んだスーツ姿の男が立っていた。
いかついその顔は大仏を連想させる。
マッケイは男に答える。
「私がマッケイだが」
「私は三島と申します。お迎えにあがりました」
マッケイは彼に連れられて出口へと向かうと、クルマに乗り込んだ。運転席の三島はゆっくりと停車区域から本線へと移動させて、スピードを上げ始めた。
「ターゲットはどうなった?」
バックシートからマッケイに話し掛けられ、三島はやや緊張した様子で答えた。
「現在、中央署です」
「中央署?あれから3時間以上経つのに、まだ居るのか」
「ええ……いささか不可解には思うのですが、先ほどGPSで確認しましたが動いておりません」
マッケイの目が青白く光った。