Ethno nationalism〜決断〜-4
ー福岡ー
中央警察署を訪れた藤田は、相川に連れられて職員食堂に入っていく。
昼をかなり回っているためか、広いフロアには数えるほどしか利用者がいない。
食堂の奥の壁には自販機が列を成している。飲料物はもとより、カップ麺や携帯食品、ハンバーガーやホットドッグなどのジャンクフードまである。眠らない警察署職員のエネルギー源だ。
相川は缶コーヒーを買うと、職員からなるべく離れたテーブルに腰掛けた。
「頼みってのは?」
缶コーヒーを開けながら聞く相川。藤田はそれには手をつけずに、ジャケットのポケットからビデオテープと一枚の紙キレ、それに携帯電話を取り出した。
「それを預かって欲しいんだ」
「何だ?これは」
藤田はそれには答えずに続ける。
「オレは明日からその携帯に連絡を入れる。もし、連絡が途切れたら、その紙に書いてある事を実行してくれ」
相川は唖然とした表情で聞いた。
「それじゃまるで今生の別れみたい……」
だが、藤田の顔を見て言葉を失った。真剣な表情だったのだ。
相川はしばらく黙っていたが、やがてポツリと言った。
「例の〈殺害犯〉と関係が有るんだな?」
相川の問いかけに答える事なく、
「じゃあ頼んだぞ」
そう言って立ち上がろうとする藤田。
「ちょっと待て」
静かに、しかし力強く言った相川の言葉に藤田は押し戻される。
「すぐに戻る。待っててくれ」
相川は慌てて食堂を後にすると、数分で戻って来た。
息を切らせながら手を差し出す。そこには、小さなビニール袋に飲み薬のようなカプセルが入っていた。
「これは?」
「…こ、抗チオ〇ンタール薬だ……もしものためにな…」
「これをオレに?」
「…もし、チオ〇ンタールを射たれたら、カプセルを噛むんだ。その素材はプラスチックだから飲んでも溶けない…」
「お前、こんな物どうやって?」
「お前が佐伯の知り合いと電話で言った日に、急いで取り寄せたんだ」
藤田は嬉しかった。これを取り寄せるだけでも相当の障害があったハズだ。それを、たった2日足らずで。