その行為は「治療」につき…-6
大学を卒業し、「佐伯」の名前と学園の卒業生だという理由で採用され赴任した4月。
始業式の場で生徒会長として挨拶する千春を見てすぐに、危うさに気付いた。
どこか自分に似たモノを感じ、他の教師から千春の家柄を説明されて、それは確信へと変わった。
放っておけない。
その思いが、学園長の代理として挨拶に来た千春に触れさせた。
「治療」という名のキス。
荒治療だとは思った。
でも、あの頃の自分が一番欲しかったのは、人のぬくもりだった。
あの頃の鬱屈とした弱さを抱えたまま大人になった、自分のようにはなってほしくなかった。
けれど、実際には彼女はさらに孤独になった。
二度目の「治療」を求められた時に、拒まなかったから。
線引きを、すべき所でしなかったから。
「教師」と「生徒」
その距離を、絶対に縮めるつもりはなかった。
でももう「教師」ではいられない。
これはきっと、これまで誰とも向き合おうとしなかった自分への罰だ。
「さえっ…き、ぁ…せんせ…っ」
涙目で、真っ直ぐに自分に向けて伸ばされた千春の腕。
佐伯は「くそっ」と内心で毒づいて千春の唇を奪うと、ゆっくりと腰を押し進めた。
よりによって、初めて向き合いたいと思った相手が「生徒」なんて、
最悪だ―――。
「んっっ…痛…っ…!」
初めての異物感に身体が悲鳴を上げる。
必死に声を押し殺し、けれど堪えきれずに佐伯の肩を掴んだ。
「っ力抜けよ…」
まだ半分しか入っていないのに、キツく締め上げる。
「無理ぃっ…」
「ゆっくり深呼吸してみろ」
髪を撫でてそう言う佐伯にゆっくりと吸った息を吐き出した。
それを見逃さずに佐伯が一気に押し入る。