**ヲタクアイドルとアイドルヲタク**-3
「それで‥下駄箱で倒れちゃって、その‥‥」
にこにこしてる優ちゃんが怖い‥‥
「何?倒れちゃって?もしかして瀬戸先輩に運んでもらったとか!??それで今まで二人で保健室のベッドで愛を確か「優ちゃんっ!??違うよっ!!!」
優ちゃんはこういう漫画とかでありがちな展開が大好きで‥‥
「第一、瀬戸先輩が運んだら優ちゃんに居場所を聞かないでしょ?運んでくれたのは‥‥」
「運んでくれたのは?」
優ちゃんすごく楽しそう‥
優ちゃんはすごくミーハーで、イケメンって聞いたらすぐ飛び付くけど、優ちゃん自体にファンがたくさんいるほど美人だ。
まるで日本人形みたいに長く綺麗な髪にはっきりした顔立ち。整った眉に吸い込まれるような黒い瞳。
そんな美人が悪戯に笑うもんだから、女の子の私でもどきどきしてしまう。
「そんなに赤い顔して、誰に運んでもらったのー?」
「えっと‥‥か‥かた‥」
「かた?」
優ちゃんは私が片桐先輩に憧れていることを知っている。だから“かた”まで聞いといて、さらにその続きを言わせる優ちゃんはすごく意地悪だ。
「片桐‥‥先輩‥。」
あぁ‥‥顔に血が集まるのがわかる。
「ふぅーん‥入学したときからず――っと騒いでたもんねぇー♪よかったじゃん!!」
「うんっ!!」
それからの授業は(いつも通り)頭に入ってなかった。いつまでも片桐先輩に触れられた額が熱くて、何度も自分の手を重ねてみた。
スラっとしている割に結構力があるんだなぁ‥
細くて白い長い指は本当に優しくて、やっぱりかっこいい‥‥
「あ‥あの‥渡辺さん‥」
そう‥‥。
最初に保健室に入ってきたときは「渡辺さん」だったのに帰るときは「ひよりちゃん」って呼んでくれた。
「わ‥渡辺さんっ!!」
「はっはい!!」
保健室での片桐先輩を思い出していたらボーっとしてたみたい。
うーん‥‥
これまでの経験からして、マズいことになる予想がつく。
「渡辺さん‥‥あの‥」
「ごめんなさい、私お弁当一緒に食べる約束してて、じゃあ!!」
急いで教室から飛び出す。いろんな声で賑わう昼休みの廊下を一人で走る私。
その後を追ってくるのは‥