『ぼくをかいませんか2 side-K』-1
女の人は、俺に安らぎを求める。
淋しさをまぎらわす為。
女の人は、俺を『誰か』にしたがる。
その誰かに慰めてもらう為。
だから俺には名前がない。
女の人が名前を付けてくれて初めて、俺は人格を得る。
彼女達好みの『男の子』になるんだ。
その代わりに俺は暖かい寝床と温かい食事を得る。
まぁついでに男女の行為も。
ギブアンドテイク。
世の中うまいこと出来てるだろ?
俺は今までそうして生きてきたし、これからもそうしてじゃないと生きて行けないだろう。
そう思っていた。
彼女に出会うまでは――
午後10時。
この駅で降りたのは久しぶり。
早速“今夜の家”に向かおうかと思っていた時に携帯が鳴った。
かじかむ手をポケットに入れて携帯を開くと、そこには彼女の名前。
「もしもし?レイナさん?今、駅出たトコロだよ〜」
努めて明るく電話に出る。
『あ…ヒロト…ごめん、今夜は旦那が帰って来ちゃったの…だから今夜は来ないで欲しいの。』
電話の向こうのレイナさんの囁く様な小さな声。
「そっかぁ、じゃあ仕方ないよねっ。また今度。」
俺がそう応えると『ごめんね』と早々に電話を切られた。
…マジかよ…
こんな寒空の下、知らない街。レイナさん以外に知り合いも居ない。
…どうしよ…
俺はポケットの中に手をねじ込んで所持金チェック。
お金は…さっきの電車の切符の釣りの130円のみ。
どーしよ…今夜は彼女を当てにしてたからなぁ…
こんな事も珍しくはないけど、やっぱり途方に暮れる。
仕方ない、今夜はこの街で“家”を捕まえるか。
俺はその場にしゃがみ込んで、タイプの女を探し始めた。
タイプの女ってのは、俺好みの女ってコトじゃない。
“年下男を買ってくれそうなタイプ”の女ってコト。
まぁ、綺麗な人がいいに決まってるけど。