投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『ぼくをかいませんか』
【その他 恋愛小説】

『ぼくをかいませんか』の最初へ 『ぼくをかいませんか』 8 『ぼくをかいませんか』 10 『ぼくをかいませんか』の最後へ

『ぼくをかいませんか2 side-K』-6

「よろしくね、トーコさん。」





『今日は疲れたから、休むね』
ソファでテレビを見ていた俺にトーコさんはそう言った。
「じゃあ僕も!」と言ったら、リビングのソファに布団と枕を置かれた。

何だ?ここに寝ろって?

「これじゃ寒いよ。」

甘えた上目使いでそう言うと、更に毛布を出してきた。


この女……
やっぱり『買う』の意味取り違えてるんだ。

今まで経験したことのない敗北感に呆然とする。
そんな俺にはお構い無しにトーコさんは、俺の頭を撫でて「おやすみ、クロ。」そう言って寝室へと消えて行った。


俺、完璧犬扱いされてるな。




―――――…
―――…

深夜

何かの声で目が覚めた。
それは本当に小さな声で。自分でもよく目が覚めたなと思うくらい微かな声。

何だろ。トーコさんか?

俺はトーコさんの寝室の扉をほんの少し、開けた。


そこには

ベッドの上で頭からスッポリ布団を被った彼女の姿。
それは微かに震えている。


泣いてるのか?


時々聞こえてくる小さな声。
それは広いベッドの上で丸まった彼女の姿と同じ。


俺は目を疑う。
信じられない。
こんな女が存在するのか?

今まで俺が会ってきた女達は、全ての悲しみを背負い尽したような顔をして、自分が悲劇のヒロインになったような…
そんな女達ばかりだった。
こんなふうに一人きりで声を殺して泣く女が居るなんて……


「トーコさん…」

静かに、ベッドへ近付く。
ビクッと布団が震えた。
そっと、その布団をはがすと、中から小さなトーコさんが姿を見せた。
細い肩を抱いて、目に涙を浮かべて、枕を濡らしている。

こんな女、俺は知らない。

こんな弱い女を、俺は知らない。


『ぼくをかいませんか』の最初へ 『ぼくをかいませんか』 8 『ぼくをかいませんか』 10 『ぼくをかいませんか』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前