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死神の恋
【悲恋 恋愛小説】

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死神の恋-1

「あなたの事が好きです。付き合って下さい。」
俺―平井俊也―の正面で、俺の眼をじっと見つめながら立っている少女は、確かにそう口にした。
俺は自分の顔が若干引き釣っている事に気付く。
おや、と思われる方もいるかもしれない。確かに、告白された男の浮かべる表情としてはいささかおかしいだろう。しかし、これからする俺の説明を聴けば納得して頂ける事と思う。
俺は、この少女の事を知っていた。というか、学年のほとんどの生徒が知っているのではないかと思う。何しろ、彼女は学年一の有名人だから。
彼女には数々の噂があった。クスリをやってる、そのせいでパクられた事もある、クラスの男全員を兄弟にしちゃった、などなど、挙げだしたらきりがない。その中でも、最も有名な噂がこれだ。「彼女と付き合った男は死ぬ」
何ともオカルトじみた噂に思うかもしれないが、こんな噂が立ったのには明白な理由がある。本当に彼女と付き合っていた男が死んだ事があるのだ。しかも、二人。
どちらも交通事故だったという話だが、一度ならまだしも、これでは噂が立つのも必然的だ。
そして、ついでについたあだ名が「死神」。
その彼女が、今まで全く話した事のない俺を屋上に呼び出して、ほんの数分前、俺に告白してきたのだ。
顔が引き釣るのもしょうがないだろう。
「あの・・・、ダメ・・・ですか?」
俺が黙っていると、彼女は不安そうな顔で問い掛けてきた。
彼女は、はっきり言ってかわいい。ずば抜けている訳ではない。しかし、何か変な言い方かもしれないが、男心をくすぐる魅力を持っていた。
じっと俺を見つめるその顔を、思わずみとれてしまう。
・・・・だめだ、騙されるな。こいつはあの悪名高い「瀬戸遥香」なんだから。
「ちょっと待ってくれないか?」
俺は彼女にそう言うと、どうやって断ろうか趣向し始めた。
・・・・断る?もしOKしたら?どうせあんな噂なんて嘘に決まってる。いや、でも本当に死んじまったら嫌だしな。でも、こんな平凡な日常よりよっぽどスリリングだよな・・・。
「やっぱりダメなんですね?・・・・あの、スイマセンでした。わざわざ来て頂いて・・・」
俺が黙ってるのを、それが答えだと思った彼女はうつむいて寂しそうに言った。なかなか上手い演技じゃねぇか。なに企んでるか知らないが・・・
「いや、いいよ。」
えっ?
その時、突然声が聞こえた。俺はしばらく戸惑っていたが、ある事に気付き愕然とする。
今の声は俺か!?
彼女は顔を上げ、眼を丸くしていたが、不意に笑顔になると「ほんとに、いいんですか?」と確認してきた。
(ここで断っちまうか?いや、それは有り得ないだろ。くそっ、こうなりゃヤケだ!)
「ああ、男に二言はねぇ」
この瞬間、俺は死神の彼氏となった。

それから俺達は、普通に恋人みたいな事をして、普通に過ごしていった。
そう、彼女は普通の女の子だった。
普通に俺に好意を寄せてくれたし、普通に笑ったり、泣いたり・・・。
だけど、俺にはそれが不気味でたまらなかった。彼女の前の彼氏が二人も死んでいる事実は変わらないし、それに、彼女に関する沢山の悪い噂。
こいつの事を信じてしまったら負けだ。そうしたら、きっと俺を陥れる気だ。本性を表すはずだ。
俺は、そんな脅迫観念に駆られていたにも関わらず、心のどこかで刺激の無い日常への嫌悪があり、いつの間にかそのまま3ヶ月程の月日が経とうとしていた。


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