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死神の恋
【悲恋 恋愛小説】

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死神の恋-3

「遥香・・・」
遥香はもう既に殆どの管を外され、人工呼吸器のマスクだけを着けていた。遥香は俺の呼び掛けに、薄目を空けたまま何かを呟いたが、よく聞き取れなかった。隣にいた医者がマスクを取り外してやっと聞き取れる。
「なまえ・・・」
「え?」
「初めて名前で呼んでくれた・・・」
そういえばそうだ。今までは何て呼んでいたっけ・・・。思い出そうとしたが、駄目だった。

部屋の中には親戚らしき人々が、沈痛な面持ちで佇んでいた。俺はすぐに遥香に駆け寄って、彼女の右手を両手で包み込んだ。温もりが伝わってくる。間に合った・・・!
「遥香・・・」
遥香はもう既に殆どの管を外され、人工呼吸器のマスクだけを着けていた。遥香は俺の呼び掛けに、薄目を空けたまま何かを呟いたが、よく聞き取れなかった。隣にいた医者がマスクを取り外してやっと聞き取れる。
「なまえ・・・」
「え?」
「初めて名前で呼んでくれた・・・」
そういえばそうだ。今までは何て呼んでいたっけ・・・。思い出そうとしたが、駄目だった。
遥香もとびきりの笑顔を返してくれた。ゆっくりとその唇が言葉を紡ぐ。
「あたしも・・・・」
それは最後まで発せられなかった。
遥香は笑顔のまま逝った。それは本当に心から良かったと思う。俺は遥香を沢山傷つけてしまったけど、最後は笑い合えた。遥香は許してくれた。遥香は・・・・。

俺は、遥香の手を放して立ち上がった。まだ涙は止めどなく溢れてくる。
ふと、今はもう抜け殻となってしまった遥香の体を見て、俺の頭に一つの疑問が浮かんだ。

死神も天国に行けるのだろうかと
Fin


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