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平和への道のり
【アクション その他小説】

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Ethno nationalism〜契り〜-4

藤田は照れた表情で、

「静代さんを夕食に誘いたくて…」

「なんだって!」

慎也の声が裏返る。

藤田は一昨日の夜、静代に夕食をご馳走してもらったお礼に、彼女を夕食に誘いたかった。

「どうかな?」

静代に聞く藤田。だが、それに答えたのは静代ではなく慎也だった。

「行ってこい!今からでも良いぞ」

慎也は舞い上がり、後先考えずに喜びを見せる。
しかし、藤田は困惑の表情を向けると、

「オヤジさん。静代ちゃんの意志を聞かないと……」

藤田の意見に賛同するように、静代が割って入る。

「お父さん!終業まで、あと1時間あるじゃないの」

静代のもっともな主張も、今の慎也には聞こえていない。

「バカ野郎!店なんざぁ早終いしたっていいんだ。それよりもナオとお前の気持ちだろうが」

えらい剣幕で言い放つ慎也。
慎也の気概に圧倒されたように、静代は〈…じゃあ着替えてくる〉と店を出た。慎也は慌てて看板を店の中にしまうと、カウンター以外の照明を消してしまった。

「ナオ、待ってる間、コーヒーでも飲んでろ」

そう言うと、いつものブレンドを藤田の前に置いた。自分はいつものマグカップで。

慎也はマグカップを両手で包み、中身に目を落としてポツリと言った。

「…あれは、不憫な子だ……」

藤田は無言で慎也を見た。慎也は続ける。

「…一度は幸せを掴み掛けたのに」

「オヤジさん…」

「なあナオ…アイツ、どうやらお前に惚れてるらしい。アイツをもらってくれないか?」

慎也の顔は、娘の幸せを望む父親の顔だった。
しかし、それは藤田にとって無理な相談だ。

「…あと10日もすれば日本を発つんだ。それから、また紛争地域へと出向き、取材する。
…いつ、死ぬかもしれない。いつ戻るかも分からない。そんなのと一緒になれば、彼女が余計に可哀想だ」

それだけ言うと、黙って夕刊を読み出した。

慎也は大きなため息をつくと、

「…そうか…」

と言ってマグカップを一気に傾け、店の片ずけを始めた。


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