Ethno nationalism〜契り〜-15
「ナオさん!!」
怯えた目で静代を見る藤田。
「もうオレに関わるな!オレは殺されるんだ」
「ナオさん!何があったの?しっかりしてよ」
「オレの友人が殺された!次はオレの番だ!」
自暴自棄の藤田。その時、静代は彼の頬を叩いた。
「しっかりなさい!」
静代は涙を溜めて訴えかけた。
その瞬間、藤田は正気を取り戻し、静代に頭を下げる。
「…すまない。取り乱してしまって…」
その口調はいつもの藤田に戻っていた。
「何があったの?」
静代の問いかけに、藤田は苦い顔で言った。
「…ボクは明日にもイギリスに発つよ。今、言ったように、これ以上、ここにいれば君にも迷惑が掛かる」
そう言って、その場から離れようとする藤田。
「待って!!」
静代の叫びが藤田の足を止めた。
藤田の目が、静代を捉える。
静代は俯いてしばらく黙っていたが、やがて、
「…今日……」
藤田は黙って聞いていた。
「今日、お父さん居ないの……親戚の家に行ってるの」
静代はそう言って藤田の目を見た。その瞳は愁いを帯びていた。
藤田は血が逆流するような衝撃に襲われた。そして、そのまま静代の家へと入っていった。