震える肢体U-3
「すいませんね。町田さん。母親がいないため、つい甘やかしてしまって」
庄蔵が申し訳なさそうに言いながら、麗香の頭を撫でる。
「…いえ、うらやましい光景ですよ」
町田には両親がいなかった。
「ところで町田さん。貴方の仕事に、この娘の送り迎えもあるんですよ。だからちょうど良かった」
そう聞いた町田は席を立つと、麗香に微笑みを投げ掛けて、
「よろしくお願いします。お嬢様」
そう言って頭を下げた。
「ホラッ、麗香。町田さんに挨拶なさい」
庄蔵に促され、麗香はヒザから降りるとペコリとおじぎをして、
「…よろしく……町田さん…」
こうして町田は、麗香の運転手として鹿島家に雇われた。
町田の他に運転手はもうひとりいた。岡部という初老の男で、彼は庄蔵の運転手だった。
町田はひと月あまり、岡部に運転手としてのあり方や運転以外の仕事を叩き込まれた。
ガレージにはロールスのファンタム?、ベントレーコンチネンタル、メルセデスマイバッハ、アストンマーチンザガートなどの超高級車が並んでいた。
庄蔵は娘の通学にと自分のクルマをプレゼントした。それがロールスのストレッチャーリムジンだった。
麗香は町田の運転で学校に通うようになった。
麗香が中等部に通うようになって3ヶ月が過ぎた。
さすがに小学校の頃とは違い、勉強が難しくなる。麗香も遅れまいと自室で予習、復習に努めていた。
夜半前だろうか。麗香は喉の渇きを覚え、自室を出てキッチンに向かおうとしていた。
「…あ…ああ……」
廊下を歩いていると、うめき声が聞こえてきた。麗香は振り向いた。そこは父親の寝室だった。
(……?…)
麗香はそっと近寄った。すると、中から聞こえるのは明らかに女性の声だ。
好奇心も働き、彼女はゆっくりとドアーノブを回して少しだけ開けて、中の様子をうかがった。
(…あれは……)
彼女が目の辺りにしたのは、父親庄蔵が女の股間に顔を埋めているところだった。
「…あん!あん!…あああ……」
(あれは…田辺さん…!)
麗香は目を疑った。最愛の父がメイド長である田辺の股間で小刻みに舌を動かしている。
(…お父様……)
嫌悪感を表しながら、麗香は目を逸らせない。
部屋から庄蔵の声が聞こえる。