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殺心者1
【ミステリー その他小説】

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殺心者1-4




彼女は呆然と眼を泳がせていた。
たいていの人間は、心の中に弱点となるものがある。
そしてそこを突けば、人間は簡単に壊れるということを僕は知っているのだから…。

見抜く眼と、壊す術を、僕は持っている。

「友達の所へ行くのでしたね。特別必要とされていないでしょうが…彼女達の“友達”という所有欲を満たしてあげたいというのなら、連れて行ってあげますよ。」

彼女は答えない。
反応を示さず、ただ宙を見ているだけだ。

僕は周囲を見渡す。
あの豪邸はかなり山奥を切り拓いたところにあり、街の方に出るには、車で下って行かなければ辿り着けない。
その通り道となる道路は、崖に沿った所が多い。ここもそうだ。
そのつもりでここに車を停めたのだから。

僕は佐伯樹里亜の手を引き、車外に出した。

「ほら、町の夜景が見えますか?」

彼女はぼんやりと虚ろな眼を持ち上げる。

「最後に綺麗な風景を見るのも良いものでしょう?」

僕は彼女の背中を軽く押した。
すると彼女はフラフラと、すがるように光の粒の方へと歩いてゆく。

そしてガードレールを跨ぎ―…

深い深い闇の中へと身を投げた。


残る娘はあと2人。

ふと見た足元に、この寒い中でも咲き誇る花を見つける。
僕はその花に心からの笑顔を投げかけ、踵を返した。

全ては、これから。


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