純白の訪問者-9
〈ルルルルルルルルッ!〉
「うわっ!」
突然の事に驚く。電話が鳴ったのだ。
(…人の電話に出ちゃいけないよね…)
しかし音は鳴り止まない。
(…でも…もし、悪い知らせだったら……)
思い切って受話器を取った。相手は意外な人だった。
「敦!元気してる?」
女性の声だ。
胸が痛くなる。不安が頭をよぎる。すると、女性は無言なのを心配してか、
「ちょっと敦!大丈夫なの?」
仕方なくめぐみは声を出した。
「…あの…敦さん、まだ帰ってないんですよ」
めぐみの声に反応して、相手の女性の声が1オクターブ下がる
「あなたは?敦の何なの。何故そこにいるの」
「…あの…敦さんの同僚で林田めぐみ……」
その時、めぐみが言い終わるのを遮るように女性が弾けた声で、
「めぐみさん!私よ、姉の由貴よ!」
「由貴さん!」
めぐみも破顔させて声を弾ませる。と、同時に身体から力が抜けていくのを感じた。
「久しぶりねぇ。敦は出かけてるの?」
めぐみが会社でトラブルがあった事を聞かせると、受話器から由貴のため息が聞こえた。
「…まったく…あの子ったら…相変わらず仕事々で。
せっかくめぐみさんのような良い人が出来たのに、そんな事続けたら逃げられちゃうじゃない」
その瞬間、めぐみの顔が真っ赤に変化した。
「わ、私…何とも、お、思ってませんから」
と言った後、
「由貴さん。なんで私が付き合ってるの知ってるんです?」
由貴は〈しまった〉と思ったのか、黙ってしまった。
「由貴さん!」
めぐみは口調を強める。由貴は観念したように〈敦には言わないでよ〉と念を押してから、
「ひと月前だったかしら……普段は連絡もしないあの子が私の携帯に掛けてきたの」
めぐみは胸が昂なるのを覚えた。由貴が続ける。
「あの子…付き合ってるヤツがいる。将来を考えたいヤツだって……」
「エッ…」
驚いた。会社や私生活でもまったくそんな素振りを見せず、自分の一方的な思いかと思っていたからだ。
めぐみの瞳から涙が溢れ頬をつたって落ちる。