純白の訪問者-8
「ヨシッ!これでオッケーだ」
敦の声と共に、ホストコンピューターのディスプレイが細かく動きだした。
後で見ていた高橋は恐縮しきりで頭を下げる。
「課長、すいませんでした!」
敦は安堵した顔でイスから立ち上がると、高橋の肩をポンッと叩き、
「後は頼むぞ」
そう言って電算室を出て行った。
「オイッ、帰るぞ!」
9時前、敦が沙耶達を迎えに来た。彼女達は空腹が満たされたせいか、ウトウトしている。
「…ふぁ?ああ…終わったの」
「ああ、帰るぞ」
3人は来た時と同じように駐車場から外に出た。
「うわぁ…スゴい降ってる」
夕方から降り続く雪は、ビルの敷地や街路樹を白く埋めていた。
敦がフィアット・チンクェチェントに乗ってきた。
「お前達も送ってやるから、今日は家に帰れ」
「え〜!そんなぁ。ちょっとでもいいからさ」
沙耶は懇願する。が、
「ダメだ。子供の時間は終わりだ」
しかし、沙耶も喰い下がる。
「私達来年受験なのよ。これからはずっと勉強の日々だから今日しかないのよ」
となりで聞いていた知佳子も〈お願いします上条さん〉と頭を下げる。
敦はしばらく腕組みをして俯いていたが、
「分かった…さあ乗れ」
「やったぁ!」
歓喜の声を挙げる沙耶。2人が後部座席に座る。
降り積もる雪の中、フィアット・チンクェチェントはノロノロと走り出した。
「…これでヨシッ!と……」
めぐみが最後のカッターシャツをハンガーに掛けたのは9時を過ぎた頃。
全部で20枚はあるだろうか、見栄えは悪いが暖房の入ったリビングに、ところ狭しと干してある。
キッチンの食器もすべて洗って棚に収めた。
「…遅いなぁ……」
リビングの窓から外を眺めるめぐみ。雪は大粒から粉雪へと変化していた。
「…何も無ければ最高だったのに……」
その時だ。