純白の訪問者-7
「お客様。今後このような事は……」
〈トスカーナ〉のマネージャーは困ったようにめぐみに言った。
「今日は突発ですから…今後はありません」
「お願い致します」
そう言うとめぐみの座る席から退いた。
ふと周りを見れば、同じ歳くらいの恋人同士がイブのひとときを楽しんでいる。
「はぁ…」
ため息を吐くめぐみ。
(…仕事一本やりを好きになるのは楽じゃないわ……)
先ほどのマネージャーがやって来た。
「おクルマの用意が出来ました」
めぐみは〈ありがとうございます〉と言うと、入口前に停まっているタクシーに乗り込んだ。
マネージャーは〈2度と来るな〉という表情を浮かべながら、深々と頭を下げた。
30分で敦の住むマンションに着いた。検知機に部屋番号を押して中に入る。
敦の部屋は5階だ。
もらったカギで玄関を開けて中に入り、手探りで照明をつけた。
「ふうっ…」
腕時計を見る。8時を少し回ったところだ。
エアコンのスイッチを入れて、ふと見回す。キッチンには使った食器が山積みだ。
(…すると…)
めぐみはバスルームに行った。
「やっぱり!」
使ったカッターシャツや下着が洗濯機の脇に山積みされていた。
「しょうがないわね!」
めぐみはジャケットを脱いで腕まくりをすると、洗濯機を回し、食器を洗いだした。
「遅いね敦さん…」
知佳子はサンドイッチを食べながら沙耶に言った。
沙耶は先ほどから、テレビのバラエティー番組を見ながら笑っていた。
「何か言った?」
知佳子は少し呆れたように、
「何でもないよ」
とつき離したように言うと、
「それにしても敦遅いなぁー。まぁ、仕事じゃ仕方ないけど」
その言葉に知佳子は微笑む。
「もうすぐよ!じきに来るわよ」
沙耶はにっこり笑い、
「そうだね」
そう言うとまた窓の外を眺める。〈純白の訪問者〉は先ほどより、降りを強めていた。