純白の訪問者-12
敦はこれまでに無いほど優しげな表情で、
「…オレはきっかけを作っただけだ。お前達は放っておいても立ち直ってるさ」
敦はポケットからキャメルを取り出し火を着けると、
「だが、それに関われて良かった。沙耶と知佳子という友人を得る事が出来た」
そう言った敦の目も赤くなっていた。それをごまかすように、
「煙がしみるな…」
そう言って目を拭う。
ひと心地ついた頃、沙耶と知佳子は帰って行った。
敦とめぐみがタクシーの前まで送りに出ると、沙耶がめぐみを捕まえて少し離れた。
「なあに?沙耶ちゃん」
沙耶は俯いて小さな声で言った。
「…あのさ…敦の事だけどさ…」
歯切れの悪い口調。めぐみは次の言葉を待った。
すると一転、さわやかな笑顔で、
「お姉さんに譲るよ!」
それだけ言うとクルリと踵を返してタクシーに乗り込んだ。
白い路面をタクシーがゆっくりと走り出した。敦とめぐみはそれが見えなくなるまで立っていた。
再び敦の部屋。
めぐみはテーブルの上を片ずける。敦はタバコをふかしながら、何か物思いに耽っていた。
「…終わった……」
「すまなかったな。せっかくのイヴが台無しになっちまって」
残ったシャンパンをグラスに注ぎながら感謝の言葉を掛ける敦。
めぐみはグラスを傾けて、
「いいえ。最高のイヴです!2人の気持ちも聞けましたから」
その時、敦が急に真面目な顔で問いかける。
「…お前…さっき言ったのは本気か?」
「さっきって?何言いました」
何の事だか忘れているめぐみに対して、敦は困ったように、
「…その、〈料理くらい作ってやる〉って事だ」
めぐみは顔を真っ赤にしながらも、こことばかりに、
「…付き合って3ヶ月。敦さんをずっと見て…これからも……」
「それ以上言うな!」
その時、敦が右手でめぐみを制した。