純白の訪問者-11
その時めぐみが、
「料理ならありますよ。〈トスカーナ〉の料理、テイクアウトしてきましたから」
敦は呆れた表情で、
「…お前……あのレストランでテイクアウトしたのか?」
めぐみは、さも当然といった口調で、
「…だって…いくら突発的とは言え高いお金払ってるんですもの。それくらいのワガママは……」
その途端、敦は声を挙げて笑い出した。
「ハッハッハ…そりゃいいや。もっとも、〈トスカーナ〉は当分出入り禁止だな」
「いいじゃないですか。料理くらい私が作ってあげますよ」
(…エッ?…)
一瞬にしてめぐみ以外は呆気に取られる。言った本人は意に介した様子もなく、冷蔵庫から料理を取り出し、テーブルに並べる。
様々な料理がテーブルに並んだ。敦がグラスにシャンパンを注ぎ、皆に渡した。
「じゃあ乾杯するか。お前達との再会を祝って」
〈カチャン〉とグラスが重なる。
めぐみが皆の皿に料理を取り分ける。沙耶と知佳子はシャンパンをひと口飲んだだけで、料理に没頭していた。
「来年受験って言ってたが、どこを受けるんだ?」
2杯目のシャンパンを口に運びながら敦が聞いた。
沙耶が答える。
「へーひんはくふん…」
「何だって?」
沙耶は口の中のモノを慌てて飲み込むと、シャンパンを半分ほど飲んで、
「聖心学園の看護学部」
「ってこては目標が出来たのか?」
沙耶はにっこりと微笑みかけ、
「…うん!看護師に……」
「スゴいじゃない!沙耶ちゃん」
めぐみが弾けた声で自分の事のように喜びを表現すると、沙耶は顔を紅潮させて〈ありがとう〉と言った。
敦も目を細める。
「1年で成長したな…」
沙耶はそれを聞いた途端、声を震わせて、
「…あの日…あの雪の日に敦に会えて良かった…おかげで…ち、チカちゃんやめぐみさんにも会えて…」
それだけ言うと声を挙げて泣き出した。涙と鼻水でぐちゃぐちゃになる様は1年前と変わっていない。
つられるように知佳子も目に涙を溜めて、
「私も…敦さんやめぐみさんに出会えたおかげで目標を持てました…それまでは…死ぬ事ばかり考えていたのに……」
2人の言葉に感化されて、めぐみの瞳も充血していた。