ベルガルド〜美しき恐怖〜-6
「あっ!」
「どうしたの?メア姉ちゃん。」
微弱ではあるが、ベルガルドの魔力を感じた。
私が気づくくらいにほんの少しだけ解放して、私を捜しているのだろう。
「友達が私を捜しているみたい、あなたも一緒に来て。」
「メア姉ちゃんの友達?近くにいるの?でも、残念だけど…僕は行けないよ。」
少年は申し訳なさそうににっこり笑った。
「僕、次はナポレン国にいかなくちゃいけないから。」
「え…急ぎの用事なの?」
私は少しがっかりした。
この可愛い命の恩人を、みんなに紹介したかったのに。
「残念だけど、仕方ないわね。」
少年はにっこり笑うと、手を振ってその場を去ろうとした。
「あっ!名前聞いてなかったよね、なんていうの?!」
私は今更ながらに少年に尋ねた。
「ラルフだよ。じゃあね、メア姉ちゃん!!」
「あっ…私、メアリーじゃなくて本当は…!」
最後まで言い切る前に、彼の姿は消えていた。素早い…。
本当の名前教えておきたかったな…。
そう思いながらも、何かが引っかかっていた。
―ラルフだよ。
(どっかで聞いたような…。)
*
「歩き回って疲れた。お前わざと隠れてたんだろ…?」
ベルガルドが不機嫌そうに、眉間にシワを寄せている。
「あんたねぇ!こっちはどれだけ大変な目に遭ったと思ってんの!!?死にかけたんだから!!!」
「はぁ?川に落ちたくらいで死なねぇよ。」
「違う!!!」
その時、急にベルガルドが私の方を向いて目を見開いた。
「おい、お前…っ!」
いきなり私の両肩を掴まれる。
「え、え?何…?近いんですけど!」
「この上着どうした!!」
「へ?」
そういえば、上着を借りたまま返すのを忘れていた。
「あー…男の子に借りて…返すの忘れて。」
「ラルフの上着だ。」
「そう!ラルフのなの!!…って、え??」
そのときになって私はやっと思い出した。
ラルフというのは、ベルガルドの弟の名前だということを。