僕らの日々は。〜神様バースデー〜-1
「うぅ……寒っ」
「まぁ、もう冬だし」
「地球温暖化はどうしたのよ?普通に寒いじゃない!」
「この前『温暖化したらペンギンがかわいそう』……とか言ってた人が何言ってんのさ……」
呆れてため息一つ。
そのため息が白くなって吐き出されるくらい、今日は寒い。
「せっかく寒いなら雪くらい降ればいいのに。なんか寒さを損した気分になるわ」
「なんだよそれ。寒さを損するなんて初めて聞いたよ」
「そう?」
一葉はくるりとこっちを振り返って、後ろ歩きしながら言う。
「例えば雨が降ったとするじゃない?」
「雨?」
「私雨はそんなに好きじゃないけど、その後に虹が見えたら得した気分になるのよ」
「あ、それは分かるかも」
「でも虹が見えるのを期待してたのに見えなかった場合って、なんか損した気分になるのよね」
……あぁ、なるほど。
「それが『雨降り損』ってワケか」
「そーいうこと。昨日の天気予報でさ、今日は寒くなるって言うから、もしかしたら雪降るかも……って期待してたのにな」
あーぁ、と頬を膨らます。
そんな姿に思わず苦笑してしまう。
「……あ、春風。なんか今笑ったでしょ?」
「え?……あ、いや」
「今日は荷物持ち決定ねー」
「……はいはい」
こういうときは素直に引き下がる事にする。
……ま、何もなくてもどうせ荷物持ちはさせられただろうし。
……そんな事を考え歩く、12月半ば。
▼▼
「うーん、やっぱ街は無駄にクリスマスムードねぇ」
「無駄って…。まぁ毎年お決まりでもあるし、キレイだし、僕は嫌いじゃないけど」
「それは同感。キレイに飾るのはいい事よね。何より見てて楽しいし」
期末テストも終わったので、今日は一葉の『買い物に行くから付き合え』との誘い(というか強制)によって、繁華街にやって来ていた。
さすがにクリスマス間近なだけあって、アーケードの中もクリスマス一色である。
「やっぱクリスマス前はこうでなきゃね」
そんな僕の感想とは裏腹に、何やら一葉は難しい顔をしだした。
「……ねぇ。クリスマスって確かキリストさんの誕生日よね?」
「ん?確かそうだったと思うけど」
正確にはキリストの誕生日については色々な説があるが、僕はそういう事を一々持ち出す程つまらない奴ではない。