僕らの日々は。〜神様バースデー〜-4
『祝える事は何だって皆で祝えばいい』……か。
「…ホント、一葉らしいよ」
「ん?何か言った?」
「いーや、何も」
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帰り道。
冬の陽は暮れるのが早い。
時刻はまだ夕方だが、もう外は薄暗い。
「うーっ、寒っ!」
「夕方からまた冷え込むって言ってたからね」
「まだ冷えるの!?信じられないわ!」
確かに寒い。
昼前に家を出たときは暖かいと感じたのに、同じ服装でも今は寒い。
「さっき買ったコート着ようかしら……」
「そうしてくれると僕も助かる」
一葉の購入物の中でも、厚手のコートは1番の質量を誇っていた。
……つまり、重い。
「んー…、やっぱいいわ。春風に楽させるワケにはいかないもの」
「……楽することすら許されないのか、僕は?」
「いい、春風?楽して育ったらダメな大人になっちゃうのよ?」
「……それが本当なら一葉も少し持とうよ」
「春風。…物事には例外というものが存在するのよ」
……要するに、荷物を持つ気は無いらしい。
「……ま、いいけどさ。そういや一葉は何をお願いした?」
「さっきのツリーのやつ?」
「それそれ」
「年末までにたくさん楽しい事がありますように、って書いたわ」
なるほど、一葉らしい。
「ちなみに七夕のときも同じお願いしたんだけどね」
「っていうか一葉、毎回そう書いてない?」
「私が神様に頼むような事なんてそれくらいよ。他の事は自分で実現させてみせるもん!」
……その辺も一葉らしい。
「春風は?」
「あー、僕は………おっ」
「ん?………あっ!」
視界に、白いモノがちらつき始める。
――それは、空から。
「……雪だ」
「雪ね」
ちらちらと降る、雪。
「……驚いた。……願い、叶ったな」
「えっ?何か言った?」
「……いや、何も」
聞こえなかったようなのでごまかす。
僕が短冊に書いた願いは、
『この寒さが無駄になりませんように』。
別に聞かれて困る願いではないが、一葉が『寒さを損した』と言ってたのをふと思い出して書いた…という事もあり、言うのが何となく気恥ずかしかったのだ。