Ethno nationalism〜激動〜-6
「これで良いだろう」
藤田は、近所のF〇DEXから送るため、出掛けようと着替えていると、携帯が鳴った。
着替えた藤田は、玄関から通路に出ながらディスプレイを見る。佐伯からだ。
「やあ、あれから連絡も無いからどうしてたのかと思ったよ」
藤田の声に佐伯は弾んだ声で答える。
「なんとかメドも立ちましたから、明後日には伺えると思います」
「その声からして、よほど上手くいってるようだな」
「ええ……後は北九州での商談だけです」
「北九州って……こっちに来るのかい?」
「そこで最後です。その後、藤田さんに会いに行こうかと。例のビデオも見せてもらいたいですし……」
「分かった。また連絡をくれ」
佐伯は〈それじゃ、また〉という言葉を残して電話が切れた。藤田は携帯をしまうと、荷物を持ってアパートを後にした。
ー東京ー
「すいません〈ナツメヤシの苗〉は有りますか?」
〈ヘブロン商会〉のレジ係にそう尋ねたのは30代半ばの男性サラリーマン。
レジ係はいつものように男を奥へと連れて行くと、報告を促した。
男は頷くと、一言々を確かめるように言った。
「ターゲットは東大阪でアルミの引き抜きパイプを数千本単位で購入。
積み荷の受入れ先はマルセイユの工作機械メーカー。納入は半年後です」
男はそれだけ言うと、ナツメヤシの苗を購入して〈ヘブロン商会〉を後にした。
レジ係はレジを他の者に頼み、2階の事務所へと駆け上がって行く。
「ボスッ!」
「どうしたレイチェル?そんなに慌てて」
「ターゲットの動きです」
ボスであるアラン・マッケイの目が光る。
「それで?」
レイチェルは〈グール〉から聞いたままをマッケイに伝えた。
それを聞いたマッケイは、しばし腕組みをして考え事をしていたが、やがて、
「やむをえんな。キャロル。〈ヤコブの弟子〉を呼び寄せてくれ。バック・チャンネルを使ってな」
「分かりました」
キャロルはすぐに無線機のような物を使って、連絡を取り始めた。
マッケイはイスに腰掛けると、俯いたまま呟く。
「あれほど忠告したのに……」
その顔には苦悩のシワが刻まれていた。