Ethno nationalism〜激動〜-17
「ジェームス!ジェームスだろ!早く縄をほどいてくれ」
だが、ジェームス・ファーガソンこと〈アラン・マッケイ〉は押し黙ったまま答えない。
「おい!ジェームス。いい加減にしろよ。なんのつもりか知らんがしまいにゃ怒るぞ」
佐伯の必死の言葉にマッケイは静かに答えた。
「半年以上前から忠告していたハズだ。〈取引きを止めろ〉と」
佐伯の背中に冷たいモノが走った。
「…あの〈嫌がらせ〉はお前達だったのか……」
半年以上前、ホテル住まいの彼の部屋に1通の封筒が入っていた。
差出人の名は無く、佐伯の名前の横に〈アイズオンリー〉とだけ書かれて。
佐伯が封筒を開けると中から手紙が出てきた。
〈進めている取引をすぐに中止しないとお前の身に不幸が訪れる〉
たった一文。それだけだ。だが、彼のような〈裏の仕事〉を持つ身には日常茶飯事な事だ。
佐伯は無視した。
それから先月と先々月に1度づつ、携帯に掛ってきた。内容は手紙と同じなうえ、機械的な声で。
それでも佐伯は無視し続けたのだ。
「残念だよエイジ。私の教えた通りにやってれば、今の生活を続けられたのに……」
マッケイはアゴで指示を出す。
その先にはマリア・コーエンが立っていた。
しかし、先ほどまでとは雰囲気が違う。シャネルのレトロスーツから黒のアーミースーツへ。ハイヒールをアーミーブーツに。そして、プラチナブロンドの髪はブルネットに変わっていた。
その手には注射器が握られていた。
「まずは知ってる事を教えてもらおうか」
マッケイがそう言った瞬間、佐伯の右腕に鋭い痛みが走った。マリアが注射器を立てていた。
マッケイがニヤリと笑いながら、
「チ〇ペンタールだよエイジ。じきに喋りたくなる……もっとも我々は訓練で使ってるがね」
朦朧とする意識の中、佐伯は初めて怯えた。
「…お…お前ら……モ……」
言葉は途絶え、眼球が震えだす。それと共に身体が揺れ出した。
「シャローム…」
佐伯の耳元でマリアは囁いた。
…「Ethno nationalism〜激動〜 」 完…