Ethno nationalism〜激動〜-13
ー浄水通りー
佐伯がマリアと一夜を過ごしている頃、藤田は自宅近くのスーパーで買物をしていた。
夜は佐伯と外へ食事に出る予定だったのが、突然のキャンセルとなったため、自宅で食事をするために。
「ナオさん!」
突然の声に声の方向を追う藤田。そこには静代がにっこり笑って近寄ってくる。
「やあ、こんばんは」
「珍しいわね、こんな時刻に」
「ああ、夕食を食いそびれてね。今から作る予定なんだ」
藤田は苦笑しながら答える。
そんな姿を見た静代は、ただ無意識に言った。
「だったら家来ない?私も今から夕食なのよ」
「エッ、しかし…」
「いいの、いいの!どうせお父さんの分も作るんだから。ひとり分増えたって同じだから」
そう説得する静代の顔が少し赤らむ。
だが、藤田はまったく気づく事無く、はにかむような笑顔を見せると、
「じゃあ……お招きに与かろうかな」
藤田のひと言に、静代の顔が破顔した。
「ナ、ナオさんはお刺身は好き?それともお肉?和食?洋食?それとも別の……」
静代の矢継ぎばやに出る言葉に、藤田は笑みを浮かべながら、
「君の手料理なら何でも良いさ」
その言葉に静代は顔を真っ赤にすると、今度は俯いたまま小さな声で、
「…じゃあ…キンメの煮付けに貝汁と…ほうれん草の白和えは?」
藤田は静代を見つめて言った。
「大好物さ!」
「じゃあ、待ってて。買っていくから」
嬉しそうな顔でむかおうとする静代を藤田が止めた。
「一緒に選んでも良いかな?……それに、材料はボクに買わせてくれ」
「分かった…」
静代は柔和な顔で頷くと、2人は一緒に売り場を共にしていた。
波を打ったような曲面で作られたカウンター。マホガニーだろうか。鮮やかなローズウッドが淡いライトに映える。
ホテルのバー。
佐伯のエスコートでマリアは止まり木に着いた。
「素敵な場所ね……」
佐伯がバーテンダーを呼び寄せる。
「ボクに任せてくれ」
佐伯は日本語で飲み物を注文すると、バーテンダーは快く頷き、シェイカーを持って2人の前で舞い始めた。
佐伯にはグラスにマッカランが注がれた。
マリアへは、縦長のカクテルグラスに琥珀色の液にチェリーがそえてある。