純な彼女-1
「いーよ。入って」
俺のその言葉に、理沙は一瞬戸惑った表情を見せた。
それを見た俺がすかさず強引に背中を押したので、理沙は慌てるように中へ入る。
「ここが俺の部屋。少し散らかってるけど」
そう言って部屋の電気をつけると、俺は持っていた荷物をベッドの上に放り投げた。
理沙は何も答えない。
…俺の部屋に初めて来たからなのか。それとも、男の部屋に立ち入ったのが今日が初めてだったからなのだろうか。
俺より三歩後ろに立ち、部屋の中を見つめている理沙はひどく緊張している様子だった。
…まぁ、どっちも正解だろう。
そんなことを考えながら、俺はわざと理沙の顔色を覗きながら言う。
「ちなみに今日は姉貴たち帰ってくんの遅いらしいから。ゆっくりしてけば」
「…う、うん…」
「俺、何か飲みモン取ってくるからどっか適当にくつろいでて」
俺はそう言うと、理沙を一人部屋に残し、一階のリビングへと足を動かした。
冷蔵庫を開けると、中からペットボトルのジュース数本を手に持ち、棚からは紙コップとスナック菓子を数袋取り出す。
それを全部ビニール袋に詰めながら、ふと思った。
…今ごろ理沙は俺の部屋で、何を考えているだろうな。
うぶな理沙のことだから、まさか単純に俺の部屋で楽しくテレビ見て談笑だけして、門限時間になったらふつうに帰るつもりでいるんじゃねーだろうな?
…ま、そんなこと俺が許さないけど。
そんなことを考えながらリビングを出て、階段をあがる。
見ての通り理沙と俺は今付き合っている。
…もちろん、理沙は俺の初めての彼女では無い。
今まで数人の女と付き合ってきたし、セックスも当然してきた。
しかし大体はいつも俺の浮気がバレて、さんざん喚かれ、嫌気がさし破局。
自慢じゃないが、三ヶ月以上恋愛が続いたことがない。
だが別にショックでも何でもなかった。
恋人というものに執着していなかったし、困っているわけでもなかったから、また次を探せばいいとさえ思っていたから。
今思えば、本気で好きじゃなかったんだと思う。
彼女を持っていれば自慢できるし、性欲処理にもなるし、とりあえず「女」という生き物を自分のステータスみたいに思っていたのかもしれない。
理沙はそんな時に出来た彼女。
だが理沙とは大学のキャンパスでごくまれにすれ違える程度で、一度も話したことは無く。
それでも大学入学当初から美人と評されていたので、顔と名前くらいなら覚えていた。
ゆえに元カノと別れ、フリーになった俺はそっこー理沙をナンパ。
育ちがお嬢様と聞いていた分、おそらく一度は断られるだろうと思っていたが、意外にも両想いだったらしく、そして今に至る。
…とまぁ、こんな感じ。
付き合い始めたものの、まだ一ヶ月にも満たない俺たち。
しかも困ったことに理沙はいつになっても、それほど俺に積極的にしゃべりかけてこない。
緊張しているのか、顔は常に赤らめているし、話しかけてもただコクコクと頷き返すだけ。
キスなんてしようものなら、真っ赤になって顔を背けられてしまう。
なんつぅか、すげー純情。こっちが困るくらい純粋な女。
今まで付き合ってきた女とはまるで正反対。
まぁお嬢様だしな。きっと今まで男と付き合ったことなんてなかったんだろう。
だから逆にそんな理沙に対して興味が湧き、頭の中ではいつも理沙の乱れた姿を想像しては抜いていた。
あの純情な理沙はセックスの時、一体どんな顔をして、そしてどんな声で鳴くんだろう。
早く俺のモノでぐちゃぐちゃに犯したい。乱れさせてみたい。
理沙と、ヤりたい。