飃の啼く…第19章-14
「試されていた気がする。」
飃が言葉少なに言った。
「己が盾を持ったのは、護ることを学ばなければならなかったからで…さくらが薙刀を持ったのは、戦うことを学ばねばならなかったからだ。」
そして、“彼ら”がどんな決断をくだしたかは、考えるまでも無い。飃はようやく、刃を振るうに足る者になったのだ。
「でも…」
神立が、控えめに呟いた。
飃の手には“正しい”武器がある。
私には、何も無かった。
「やはり…あなじが強大すぎたのか…」
イナサさんが呟くように言った。
「いいえ。」
私は、私の中で形になり始めた何かをすでに確信していた。
「私は、失ったわけじゃないとおもう。」
全員の目が、私に向けられる。
「九重がまだあったときと同じように…自分が何かと繋がっている感じがするの。北斗には形が無かったから、きっとそういうものなのかもしれない…盾とは限らないんじゃないかな…。」
私は、一人うなずく。
「比ゆ的なものかもな…。」
颪さんが言う。
「形にこだわらねぇで、要は意義だけを考えればいい。何かを“護る”力があるのなら、それは盾なんじゃねえですかね。」
こういっては悪いけど、いつもへらへらした颪さんが真顔でこういう話をすると、妙に説得力がある。皆、真剣な面持ちでうなずいた。
「ま、焦っても仕方ないよな…」
カジマヤが、みんなの荷をおろすような口調で言った。
そして、茜の意識はまだ戻らない。
戻らぬまま、もう5日が過ぎた。
茜は一般病棟に移されたけれど、予断を許さない状況なので、常に誰かが付き添っていた。私が学校を終えて茜の病室に寄った時には、風炎が番犬のように茜のベッドについていた。
「あの…少し休んだら?」
もともと目つきがいいほうではなかったけど、憔悴しているせいで血走って、余計に近づきにくい表情になっていた。
「私の作ったのでよければ…一応おにぎり持ってきたから。」
アルミホイルに包まれたおにぎりを、無造作に2,3個取り出す。風炎はそれを見てふ、と笑った。