プロポーズ?-1
電話から、悪友の笑い声が響いてくる。
「笑うなよ!!」
「すまん、すまん。いやあ、いい笑い話だ〜ねぇ〜っ…、くっくっくっ。」
「…今度会ったら締め上げてやる…。」
この一言で電話の向こうの笑い声が止んだ。
「で、どうすんの。諦めんのか?」
「ンな訳ねーだろ。でもなぁ、もう一回すんのもなぁ。」
「大学入るのに一浪、出るのに一留したお前らしくもない。随分あっさりしたな。」
コイツ、次会ったら絶対ぶっ飛ばす。
「そんな昔のことは忘れたよ。」
「へぇ、健忘症だったんだ。お大事に。」
あー腹立つ!コイツに話したのが間違いだった!
「もういい。切るぞ。」
「おい。他人の一生を請け負うもんなんだぞ。ちょっとつまづいたくらいでへこたれるな。じゃなかったらプロポーズなんかするな!」
プープープープー
言いたい放題言われたうえ、一方的に切られた電話を、オレは忌々しく見つめた。
クリスマスシーズンを迎えた神戸。
恒例のライトアップイベントで街は彩られていた。
溢れ返る人の波に押されながら、光の回廊をゆっくりと進んで行く。
幻想的なイルミネーションに美しく響き渡る音楽。
ミッション系大学に通っていただけのなんちゃってクリスチャンのオレだが、光と音の醸し出す荘厳な雰囲気に教会を思いだし、そこから派生した考えによってあることを決意した。
隣にいる付き合って一年弱になる彼女に、プ、プロポーズすることだ。
わ、どもった。
それくらい、緊張していた。
そろそろ、とは前々から思っていたが、いざとなると…。
「き、キレイだな。」
「はい、すごーくキレイ!」
「アレだな、その、今年も後少しだな。」
「そうですね〜。」
「どんな年だった?」
「うーん…、あちこち旅行したな。海外も行ったし。あとは習い事始めて、仕事も新しい部署の立ち上げに関わって。スッゴく忙しかったけど、充実してました。」
「そっか。いい年だったんだな。じゃ、来年の抱負は?」
「ええっ、まだ今年が二週間以上残ってるのに?」
「いいから、いいから。」
「んー、今年以上に色々チャレンジする!」
「おー、例えば?」
「資格とったりして、スキルアップします。」
涼しげな瞳をクルクル動かし、宣言するかのように彼女は言った。