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故蝶の夢〜帰ってきたあいつ〜
【悲恋 恋愛小説】

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故蝶の夢〜未来〜-1

意外だった。

まぁ、何が意外なのかと言うと、また光る道に戻されたことだ。
沙希のが最後の扉だったから、私達の旅もこれで終わりなのだと思っていたのに…

「…どうなってるの?」
私は多輝に尋ねた。

「さぁ…?」
多輝はそっぽ向いて答える。

「…。」

気まずい…

最後だからと思って、多輝に好きなんて言っちゃって、そしたら多輝に後ろから抱きしめられ…。
思い出して顔が赤くなるのを感じた。
顔を合わせられないんですけど…。

「あ、あの…さっきのは…」
なんとか言い繕おうとしていると、目の端に何かが映った。さっきまではそこに無かったもの。

「扉、だな。」

そう、そこには扉が出現していた。
だけど、他のものとは様子が違っている。

「何これ…」

その扉は太く頑丈な鎖が幾重にも巻きつけてあり、とても開きそうにない。
扉自体も赤くなく、真っ黒で2倍もの大きさがある。
「これじゃ開かないじゃない。」
「そうだよな、どうなってんだこの鎖…。」
多輝がその鉛色に鈍く光る鎖に触れた時、
パン
と、鎖が粉々に砕けた。

目を見開いて驚く私とは対照的に、多輝は納得しているようだ。
「この先で、俺を待ってたんだな。」
噛み締めるような多輝の声を聞いた。





扉の中に入った私たちが見たのは、それはそれはおぞましい光景だった。

「誰なのこれ、誰の心?」
私は多輝にしがみつきながら進む。

ここは明らかにおかしい。
異常だ。

茶色と灰色の絵の具をマーブルにしたような気持ちの悪い空。
全ての植物が枯れていて、歩くたびにカサカサと音がなる道。

それ以上に怖いのは。

空から剥き出しのナイフが無数に落ちてくることだ。
刃物が雨粒の代わりにだとでも言うように、ひっきりなしに。
だけど、それは私たちを傷つけることはなく、ただ、ぬかるんだ地面に突き刺さって、食い込んでいく。
そして、地面からは血が滲んでいるのである。
私は顔をしかめた。

(おかしいでしょ!明らかに!!ここの人に会うの怖いんだけどーーー!!!)

心の中で叫ぶが、口に出す勇気はない。
多輝の顔を覗き見ると、すごく険しい顔をしている。
その理由を私が知るのは、もう少し後のことになるのだが…。

急に、足元の泥に足を取られた。


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