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故蝶の夢〜帰ってきたあいつ〜
【悲恋 恋愛小説】

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故蝶の夢〜未来〜-6

「俺と過ごすはずだった未来を、生きろ。」


トン


と肩を押された。
足が宙をきる。体が傾く。

私は落ちた。

多輝が小さくなっていく。

待って、待って、待って。
私は思いっきり手を伸ばす。

届かない

だけど、その時見た多輝は、確かに笑っていたんだ…





「つぐみ…」
「え…?」
目が覚めた。目の前には沙希の顔。
何が起きたかわからずに、周囲を見回す。
そこは教室だった。
(そうだ…みんなでここに集まってて…)
私は自分の顔に手を触れると、頬が涙で濡れていた。
「つぐみ、どうして泣いてるの?」
「わかんない…何か、夢を見ていたような気がするのに…」

大事な何かを忘れているような…

「みんながいっぺんに眠っちゃてさ、変だと思わない?有り得ないよ〜!」
「うん…」

眠ってからあまり時間は経ってないようだ。1時間くらいだろうか。
もっと長く眠っていたように思うけど。

他のみんながなぜか、元気になっている。
胸のつかえが取れたような、爽やかな顔…

私もなぜだろう。心があったかくて、悲しくない。

「つぐみ、明日は…学校来る?」
「え…」

心配そうな沙希の顔。
私は力いっぱいの笑顔で答えた。

「もちろん!!」


集団で眠ってしまった事件以来、私たちはいつも以上に精一杯生きているように思う。
多輝の友達だった塚本くんは、最近活発になって、部活も始めたようだ。

私も、一生懸命、生きている。

なぜだろう

多輝が生きられなかった未来を必死に生きて、未来をかき集めて…
そうして、いつか私が死んでしまった時に、天国にいる彼に話して聞かせたい。最近そう思うようになったんだ。

理由はわからない。

「覚えてないけど、あの夢…見た時からかなぁ…」
私は空を見上げる。


部屋の写真立ては、新しくした。
そこには
未来を信じていた私たちの、笑顔が写っている


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