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故蝶の夢〜帰ってきたあいつ〜
【悲恋 恋愛小説】

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故蝶の夢〜未来〜-4

「あの日また僕があいつらに殴られていた時…」
私はなんとなくその続きがわかるような気がした。

「多輝が現れた。」

落ちてくるナイフがザクザクと彼に突き刺さる。
彼は苦痛に顔を歪める。

「君もわかると思うけど、多輝はそいつらを止めに入った。そして、揉み合った拍子に車道に突き飛ばされて…」

私は胸を押さえる。もう、やめて。

「多輝は、死んだ。僕のせいで。」

その瞬間、すごい量のナイフが彼に向かって落ちてくる。
彼は動こうとしない。

その時―

塚本くんの腕が引っ張られた。
対象を失ったナイフは真っ暗な地面に、突き刺さる。

「何してんだ、この馬鹿野郎!!」
怒声が響いた。
いつの間にか多輝がそこにいて、ナイフの雨から彼を守ったようだ。

「ごめん…多輝…ごめん…」
塚本くんは相変わらず、俯き、ただ謝るばかり。
「…君が望むなら、この世界で彼女と永遠に過ごすこともできる。僕が悪魔に命を与え続ければ…」

多輝が、塚本くんを叩いた。
「俺は、そんなこと望んでない…」

私は今になってようやく分かった。
多輝が、みんなの扉を開けるのを急いでいた理由を。

多輝は早く助けたかったんだ、この地獄に篭もる彼のことを…

「俺は、もし過去に戻れたとしても、お前を助けようとする。何度でもな!!後悔なんてしてない!でも……お前がいつまでもそうやって、自分の殻に閉じこもっているようじゃ、俺が死んだ意味なんてなくなるんだぞ!!」

塚本くんはびっくりしたように目を見開く。

「俺をこの世界に閉じ込めたいならそうすればいい。でも、それは、俺が無駄死にしたってだけの話だ…」

少しの沈黙の後、塚本くんは堰を切ったように泣きくずれた。

「じゃあ、僕は…!一体どうすれば、どうすれば君に償えるっていうんだ…!」

「もう、十分じゃない…」

私は彼を見つめた。彼を憎もうなんて気は起こらない。
何も悪くないから、ただ、弱かっただけだもの…

私みたいに。

「もう、ここで十分償った。血まみれになって自分を傷つけて…そして、多輝に最後のお別れの時間をくれたじゃない…」

私は多輝を見る。
多輝も私から目を逸らさない。

「もう、いいんだよ…。塚本くんは、目覚めても戦っていける。もう誰にも媚びたり、従ったりしないって約束して。」
塚本くんが徐々に砂になっていく。足元から崩れる。

「多輝に恥ずかしくないように生きるって約束して…」

彼はしっかりと頷いた。そして多輝の方を見る。
「塚本、またな。」
「うん…また、いつか」
一瞬にして砂が崩れた。

風に吹かれて、消えていく。

あぁ、最後だ。と私は確信した。
多輝と見つめ合う。


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