難読語三兄妹恋愛暴露~長女Ver.~-1
『茶色』というより『オレンジ』というより『朱色』に近いショートヘアーをなびかせて彼女が歩けば、サッと道が開くのです。
どーもどーもと頭を下げながら彼女は少し遅めの登校をしました。
「おはよー長閑!あのね、聞いて。ちょっとヤバいの…」
「おはよ…って何何?どしたの!?」
見た目からして決して『のどか』ではないこの女こそが私の姉、宇奈月 長閑なのです。
「ミワがさぁ万引きで捕まっちゃって…」
「えっ!?まじ?」
長閑は険しい顔でそう言った後
「でも万引きしたんなら仕方ないじゃーん。ミワが悪い!」
と言って、再び歩き始めました。そんな長閑を「待て待て待て!」と言って友達は引き止めます。
「最後まで聞け!」
暗い面持ちで友達は続けました。
「でもミワやってないっつってんの。店員の勘違いだって…」
「ふーん。で、何盗ったの?」
「だからやってないって!…えっとね、確かリップクリーム…」
友達の言葉を聞いて、長閑の口元が悪戯に上がりました。
「……乗り込むよ!」
長閑は友達の背中をパンッと叩くときびすを返して生徒指導室に向かって歩きだしました。その姿は堂々としていて、朝(というよりもうすぐ昼)の光を浴びた長閑はキラキラ輝いて見えました。
これは今から少し前のお話です…。
「だからやってないって!これは前に買ったものなんだってば!」
廊下にまでミワ(って人)の声が聞こえてきます。
長閑と友達は生徒指導室の扉の前で止まりました。
「エリ、いくよ」
「うん」
友達…いや、エリはこくんと頷きました。
それを見て長閑はニヤッと笑い、扉に手を掛けました。
そして
「ハイどうもぉー――っ!!」
…開けやがりました。
テーブルを挟んで先生三人とミワが向かい合う状態で座っていました。けれども、みんな顔はこちらを向いており口をあんぐりと開け呆気に取られています。
しかし、んなこと長閑には関係ありません。