難読語三兄妹恋愛暴露~長女Ver.~-8
数時間後―
「僕、生きてるよーっっ!」
「みりゃ分かるわ、ボケ!生きてるどころか無傷じゃねーかよ!」
そう、結局ポチは無傷だったのです。気を失ってただけなのです。
どうやら迫っていた車はいきなり立ち上がったポチを間一髪で避けたらしいのです。ただ、それがあまりにもスリリングだったのでポチは失神したのでした。
そしてついさっき、目が覚めたのです。
「もう、驚かさないでよ。このアタシが!どんだけビビったことか!」
「ごめん、長閑ちゃん…」
ポチは病室のベッドの上でシュンとしました。
そんなポチを見て、長閑は軽く息を吐くと、ゆっくり首を振りました。
「ううん、謝んのはアタシだった。ごめんね。そんな店だったなんて知らなくて…」
『そんな店』とは例のドラッグストアのことですが、どうも『あちらさん』方面の方々と繋がりがあるらしいと、ポチの大学で噂になっていたそうです。長閑を危険に曝したくなかったポチは体を張って長閑を守ってくれたわけです。
「長閑ちゃんならその噂、知ってたとしても乗り込んだでしょ?」
悪戯っ子のようにポチが笑いました。つられるように長閑も
「たぶんね」
と苦笑いをしました。
白で統一された小さな部屋は、相手の鼓動すら聞こえそうな程静かでした。
「ポチはさ…」
長閑が口を開きました。頬が少しピンク色に染まり、目線は床に向けられています。
「アタシの兄貴としてアタシを守ってくれたの?」
あの破壊神が少女になっています。
少ししてからポチは「うん」と頷きました。
「…そうだよね」
長閑の声は心なしか寂しそうでした。
「最初はそう思ってた」
長閑は驚いたように顔をあげ、ポチを見つめます。
「でもね、途中から僕の中で長閑ちゃんは妹じゃなく一人の女の子になってるって気付いたんだ」
「え?」
「長閑ちゃんのことしか考えらんなくて、長閑ちゃんでいっぱいだったよ」
優しい微笑みを浮かべるポチ。
「だから僕は一人の男として一人の女の子を守ろうと思った」
長閑の目には今にも零れそうな程、涙が浮かんでいました。
「妹としてスキなんじゃなく、女の子として好きだってことも分かったよ」
ポチはそっと長閑のふわふわの髪の毛に触れると、愛しそうに優しく撫でてあげました。
「長閑ちゃん、だ〜い好きだよ!」
ポチはそっと長閑に近付くとキュッと抱き締めました。しばらく黙っていた長閑も鼻声でゆっくり話しだしました。