難読語三兄妹恋愛暴露~長女Ver.~-3
「な、何!?」
「びっくりした…」
ゆっくり顔を上げた長閑の顔は今にも泣きそうなくらいクチャッとしていました。
「お、お弁当忘れた…」
『お前もかー―――っ!』
エリ&ミワの激しいツッコミが炸裂します。
「人の彼氏さんざんバカにしといて…」
「こいつ、オバカだ」
「ぃよーっし、こうなったら!」
長閑がすっと立ち上がりました。そして何をするのかと思ったら
「あ、もしもしポチ?うん、アタシ。お弁当忘れた。あ、そう?サンキュー」
電話です。さっき自分で「どうしようもない」って言ってたくせに電話しやがりました。
だけど、長閑の場合はどうしようもなくないのです。
五分後―。
バタンと屋上の扉が空きました。
「の〜ど〜か〜ちゃ〜ん!」
「ポ〜チ〜!」
『ポチ』が長閑に駈けよりました。
ポチって誰だよ、ですって?
説明しましょう。
玄人・詩歌が幼なじみだというのは前回で御存じだと思いますが、実はもう一人いたのです。
それがこの『ポチ』こと、清水 淘汰です。高校まで同じだった三人でしたが、淘汰だけ違う大学に進学しました。その大学というのが、長閑の高校の目と鼻の先にある大学のため、こうして長閑にちょくちょく呼び出しをくらっていたのでした。
「え、誰々?」
ミワが首を傾げます。
「あれ、ミワってポチと合うの初めてだっけ?」
ミワはこくんと頷きました。
そんなミワに屈託のない笑顔でポチは自己紹介を始めました。
「初めまして、しみず とうたです。長閑ちゃんとはね、小さい頃からの仲良しでね、僕の妹みたいな存在なの〜」
「そっ、アタシのお兄ちゃんみたいなもん」
ぇえー!長閑の真逆の雰囲気なのにー!?
と、ミワは思いました。
確かにポチは見た目もホワンとしていて、親しみやすい雰囲気です。
「これから僕とも仲良くしてね!」
淘汰はにこっと笑いました。
「あ、はい!海羽子です。よろしくお願いします!」
ミワもつられて頭を下げました。
「で、ポチ。アタシのお弁当は?」
ミワはハッとして顔を上げました。エリの顔も引きつっています。
「あ、大学の売店で買ってきたよ。長閑ちゃん、カツサンド好きだったでしょ〜?」
「うん!ありがとう、ポチィ!!」
そりゃ兄貴じゃなくて家来だよ…。
そんな光景を見ていた二人が同じことを思っていたなんて、オバカさん達には一生分からないでしょう。