難読語三兄妹恋愛暴露~長女Ver.~-2
「ミワ、行くぞ。授業遅れるよ」
長閑はズカズカ入り込むと、ミワの手を引きました。
「あ、え…長閑?」
「お、おい。こら、宇奈月ぃ!いきなり入ってきて、何だお前は!!」
全くですよね。先生の仰る通りです。
「ミワは何もやってないよ」
長閑はミワを掴んでいない方の手で、自分の制服のポケットを漁りました。
「ほら。じゃあね」
長閑はポケットから取り出した何かを先生達の前にポイと投げ捨てると、さっさと出ていってしまいました。
「う、宇奈月!ゴミはゴミ箱に…あ゛ーっ!」
それはドラッグストアのレシートでした。ミワが盗んだと思われていたリップクリームの…。
―キーンコーンカーンコーン…。
チャイムが鳴ると同時に長閑、ミワ、エリの三人は立入禁止とされている屋上に走りました。
「しっかし楽しかったねーっ!」
誰もいない屋上の真ん中に腰を下ろした三人は、いそいそとお弁当を取り出しました。
「カメの顔、思い出すだけでも…!」
エリが吹き出します。
ちなみにカメとは長閑に「ゴミはゴミ箱〜」とか言っていた人です。目が腫れぼったく、つるんとした頭、妙に長い首、亀そっくりです。
「てかさ、何であんたレシート持ってんの?」
ミワの問いに長閑は呆れたように「はぁ?」と首を傾げました。スクールバッグを漁る手も止まります。
「このバカタレ!こないだ一緒買い物付き合った時、ミワがアタシに渡したんじゃん。『ちょっと持ってて』って!」
どうやらこういうことらしいです。
ミワがレシートを貰った時、ミワに彼氏から電話が来たそうです。片方にはドラッグストアのビニール袋、もう片方はレシート。邪魔になったレシートを長閑に渡して電話に出たミワ。長閑は電話が終わってから返そうと、制服のポケットに入れたままお互いに忘れてしまったらしいのです。
「ま、何だかんだでアタシもすっかり忘れてたんだけどねー!」
アッハッハと笑い合う三人。
その時、ピロロン♪とエリの携帯電話が鳴りました。
「あ、彼氏からだ。…ちょっと、こいつ弁当忘れたって!メールされたってどうしろっつうのよ」
彼氏からのメールを当たり前の用に無視し、エリは携帯電話を閉じました。なんて彼女はドライなんでしょう。
「エリが自分のお弁当分けてあげるわけないのにね。メールしてもどうしようもないのに。エリの彼氏もオバカさんだねぇ……ぁあ!」
バッグを漁る長閑の手が止まりました。