「別れ話をしよう」-5
[act.2]
足りない言葉を埋めるように3本目の煙草に手を伸ばす貴方。
もう、想い出しか話す事がなくなってしまったね。
貴方と過ごした2年間が、煙よりも呆気なく幕を閉じていく。
空になった目の前のグラス。
まるで今の私たちみたい。
もう、何も残っていない二人の関係。
貴方の頼んだ2杯目のバーボン。
お酒をコップに注ぐみたいに、私たちの関係も簡単に満たせればいいのに。
せめて、これを飲みきるまで。
この氷が溶けるまでは、恋人でいさせてよ。
もう少しだけ。
それくらいの我儘は許して欲しい。
新しい恋人はどんな人かしら。
幸せにしてあげてね。
私の分まで。
悲しい思いをさせたりしないでね。
私のように。
どうして私じゃないんだろう。
貴方の隣を歩いていくのが。
何が足りなかったんだろう。
後悔しても仕方がないけど。
幸せになってね。
私はもう、貴方に何もあげられないから。
それがとても悔しくて、少し悲しい。