ベルガルド〜横転〜-4
「ベルー!セシルちゃん足骨折してるよ!動ける状態じゃないけど、どうする?」
「そんな、セシル…」
ベルガルドは盛大なため息をついた。
「病むを得ないな。セシルとトゥーラだけを残していくわけにもいかねぇし…。カイ、お前も残れ!!」
「何言ってんの!?ベルはどうするのさ!!」
「一人でいい。どうせ俺に匹敵するやつなんてそう存在しないだろ?」
「そんなことを心配してるわけじゃないよ…。ベル…だって…」
カイはすごく言いにくそうにしている。
「言いたいことがあるならハッキリ言え。」
「サンドールまでは一本道だから馬車任せたけど……ベル方向音痴じゃん。」
私は固まった。
ゆっくりと顔をベルガルドの方に向ける。するとベルガルドも眉間にシワを寄せて硬直していた。自覚があるのかもしれない…
「私も、行くわ」
自然とその言葉が口から出ていた。
「セシルはカイに任せる。私に今出来ることといえば…」
ベルガルドの方に向かい、にやりとして見せた。
「道案内くらいでしょ?」
こうして私たちは二手に分かれた。
これが悪夢の始まり。
心配そうな顔をしているカイと、申し訳なさそうに自分を責めているセシルを残して、私たちは道の先へと歩いていった。
数キロ先の、サンドールを目指して。
*
薄暗い場所で、二人の男が話をしている。
「長官。アーレン国女王の勅使が来てますが…いかがいたしますか?」
「アーレン国?まさか気づかれたのか…?」
「分かりません。…人を探していると言っていましたが。」
「まずいな。奴らはアレを探しているのかもしれん。いつもの方法で早急に手を打て、いいな。」
「はい、長官。」
そして報告を完了した男は姿を消す。
「やれやれ…。もうちょっとという所で邪魔されてはかなわんからな。」
その男は暗闇の中、金色の八重歯を輝かせて、企むように笑った。