勇者御一考様-3
ミネルダ:私の名前。あなたは?
ハーツ:ハーツ。
ミネルダ:ハーツは何で旅をしてるの?
ハーツ:世界を救う勇者だから。
ミネルダ:え…。
ハーツは、あーん、とハムステーキを子供の様に噛り付く。
ミネルダはそんなハーツを心臓を高鳴らせながら見た。
ミネルダ:あなた、勇者なの?
ハーツ:ん、村の魔術師のばっちゃんにそう言われた。
ミネルダ:…ねえ、ハーツ。『勇者の姿』って魔法知ってる?
ミネルダは何か考えながら言った。
ハーツは会話よりデザートのブドウの方に集中している。
ミネルダ:ねえ、聞いてる?
ハーツ:これ喰って。
ミネルダに出されたのは、皿に綺麗に残った野菜だった。
ミネルダ:ちょっと…野菜くらい食べなさいよ!
ハーツ:やだね。野菜嫌いだもん。
ミネルダ:体に毒よ?それに、野菜が嫌いって子供じゃないんだから…いくつ?
ハーツ:ケフッ…22歳。
ミネルダ:私より年上…あなたが勇者には見えないけど…からかってる?
ハーツは首を横に振る。
ハーツ:こんな所で知らない人に嘘突いても仕方ないじゃん?
それもそうね、とミネルダは仕方なく貰った野菜を食べる。
ハーツ:『勇者の姿』だけどさ、俺やったよ。
ハーツが唐突に言った。
ミネルダは野菜を食べながら聞いた。
ミネルダ:やっぱり…それならあなたの言うことは本当ね。その魔法は選ばれた人物しか使えない高等魔法だから。知ってる人もあまりいないわ。
ハーツは苦いコーヒーを啜りながら彼女の話を聞いていた。
ハーツ:結構痛いよ。あれ。
ミネルダ:え?
ミネルダはフォークを置いた。
ハーツ:俺の他にも何人か調べられた人いるけど、みんな何とも無いのに、俺だけなんだよねぇ。
ミネルダは首を傾げる。
ミネルダ:どんな痛さなの?
ハーツ:うーん、心臓に針刺される感じ。分かる?
ミネルダ:要するにかなり痛いのね…。
ハーツは頷いた。
ミネルダはハムステーキの皿を見つめる。それをハーツは不思議そうに見た。