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at office
【OL/お姉さん 官能小説】

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at office3-3

昌樹が気を付けろと言った意味がわかった。最初はその容貌に警戒して一歩離れていたが、いつのまにか警戒心がなくなっていた。原因は昌樹の話題が出たせいだとわかっているが、もし自分が昌樹を好いていなかったとしても上手く緊張を解すような会話をしてくるに違いない。言い方は悪いが、要するに女慣れしているのだ。
きっと、モテる人の条件は相手の警戒心を解くのが上手なことだろう。などと変に自己納得していると、昌樹に軽く頭を小突かれた。
「早く片付けてしまおう。」
「あっ、はい。」


会場の片付けが終わり、各々が帰路につく。会場には数える程の人数しかいなくなった。
昌樹にメールを送る。同じ会場に居るので、昌樹が携帯を取り出し画面を開く様子が見えた。会社の皆には二人が付き合っている事を言っていないので、今まさかメールの相手が自分だとは思わないだろう。二人だけの秘め事をしているのが嬉しく思える。
『お疲れさまでした。お先に失礼しますね。昌樹さんも早く帰って休んでください。』
手に携帯を握り締めたまま会場を出ると、すぐに返事が来た。
『おつかれ。俺ももう帰るから、外で待ってて。』
てっきり今日はそれぞれに帰宅すると思っていたので予想外の返事にテンションが上がる。疲れも吹き飛びそうだ。
出口から隠れたところで待つ。少しして昌樹が出てくるのが見えた。歩いていく昌樹を追いかける。それに気付いた昌樹は振り返り足を止めてくれる。
「そんなとこにいたのか。気付かなかった。」
さすがに周りには社員がいるかもしれないので手は繋げない。もっと寄り添って歩きたいのに。このままでは、帰れなくなりそうだ。でも今日はお互いに疲れているから我慢しよう、と自分に言い聞かせた。



他愛ない会話をしながら駅に着くと、
「俺、会社寄らないといけないんだ。」
と昌樹が言い出した。
会社に寄ると言う事は、普通に家に帰るより二駅も早く別れてしまう。そう思った瞬間
「私も行きますっ。」
と言っていた。
言ってからはっとする。昌樹も驚いた顔でこっちを見ている。今日はお互いに疲れているからと、さっき我慢を誓ったばかりなのに。
昌樹も、美南が会社に用事など無いことはわかっているから、明らかに一緒にいたいんです!とアピールしているようなものだ。
空気の読めない重い奴とか思われたらどうしよう、と狼狽えて赤面していると、昌樹が吹き出した。
「面白い奴。じゃあ、悪いけど手伝ってくれる?」
「は…はいっ。喜んで!」


会社に着くと、やはり誰もいなかった。営業フロアだけでなく、社屋には人気がないようだ。8時半を回ると、警備会社が人の出入りを管理するので、裏口の管理室へ入室届けを提出し、フロアへ入った。
必要最低限の蛍光灯を点け、資料の整理をしていく昌樹。どうやら得意先に提出する書類をまとめるようだ。

「またあのお客さんですか。いつも無理言うんですよね。」
「うん。でもごひいきにしてもらってるから断れないのよ。」
「確かに。二人ならすぐ済むから、早くやっちゃいましょっ。」
そういって軽くガッツポーズを作り、机に広がった資料を半分取る。
「助かるよ。杉下は仕事早いから。」

昌樹は仕事モードの時は『美南』ではなく、『杉下』と呼ぶようだ。新しい発見だな、と嬉しく思うが、杉下と呼ばれたと言う事は今は仕事に集中しなければ。頭を切り替えて目の前の資料と戦う事にする。

しばらくすると、昌樹の方は一段落したようで、コーヒー飲む?と訪ねてきた。あと少しでこちらも終わりそうだったので、喜んで戴く事にする。美南が頷くのを確認すると、昌樹は部屋を出た。自販機はひとつ下の階にある。


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