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小悪魔と盲目なるワンコちゃん
【大人 恋愛小説】

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小悪魔と盲目なるワンコちゃん-9

できることなら、もらったばかりの花束で彼の顔をブン殴って尻も蹴っ飛ばしてやりたい!
宇宙の果てまで消えちまえ!この野郎!ってね。
そんな煮えたぎる気も知らずに、カシャカシャ携帯のカメラを構える彼。
あたしの中で。
何かが。
ふっつりと。
切れた。
…………。
にっこり。
「あたしって可愛い?」
「可愛いです!綺麗です!ああ〜〜っ!!」
興奮して写メまくる彼を尻目に、ターンして控えめにポーズをとってみる。
もうヤケクソ。
昔からそうだった。
170の大柄、目力にデカ乳。
自分を美人とも思わないのに……着せ替えやセクハラなど、外見でちやほや言われるのはもう飽きた。
中身を見ろよ、ボケっ!
そうして最高の1枚が撮れたのか、自己満足する彼に。
「バスが来たよ。もう帰りな」
口調までそっけないあたし。
「まだ一緒にいたい……」
「いいからっ!」
語気の冷たさにさえも愚鈍なのか、くぅ〜んと淋しげな瞳を向けてくるポチ顔。
知らん知らん、もう見切った!
「写メっていいですか?」すら一言断る礼儀もなく、人の嫌がることを平然とやった彼の無神経さに、これ以上付き合えっか!
とぼとぼ意気消沈する彼がバスに乗るのを見届けて、バイバイ無理に手を振る。
―――クソクソクソクソクソ畜生ぉおおおおお!!
怒りも腹の虫も治まらない。
道端に転がる小石さえも蹴っ飛ばしたい気分。
昔の狼どもの方がまだ良かった。
男としては最低なヤツらだったけど、少なくとも元ヤンとしての礼節と引き際を心得ていたから。
こんなに胸クソ悪いのは初めてだ!



やりきれない想いで見た夢は、酷く重苦しかった。
墨で真っ黒に塗りつぶしたような夜、多分真夜中だろう。
あたしは深い森の中、えんえんと続く沼地に足を取られながらも何とか、前へ前へと必死に進もうとしていた。
視界のきかない暗闇に、たった独りぼっちで。

―――好奇心から招いた、厄介な人間関係への警告か…。
沼地を歩いているのは心の疲れ、思い通りにならない現実に対する不安を暗示。
まさに、その通りだ。
彼とは会わない。
そう決めたのに、ずるずるメール続行してしまった。
ちっ。
いきなりフるのもアレだしな〜。
それに、彼に嫌々奢られた食事代や車のガソリン代、プレゼント代を思うと、何となく後ろめたくてね。
気が強いようで、実は神経質で小心者なんだよ!
ツメが甘いわ、あたし。
代わりにメールで、会って気づいた彼の嫌いな所やその理由を添えて、改めてプラトニックな付き合いを期待したけど……
どうやら見込薄だったね。


『紫煌さん、今何してるんですか?』
洗濯とか掃除とか会社着のアイロンがけとか、いろいろ〜。(知らねぇよ)
『淋しいです。会いたいです』
淋しいからと言って、あたしをアテにしないでね。ボジティブにアクティブに。(淋しい淋しいって言いすぎ!こっちまで鬱になる)
『今度の週末、会いませんか?』
用があるからごめん。友達と会ったり彼女でも作ったり実家に帰ったりしたらどう?(毎週なんて勘弁!会うだけで疲れる)

彼からのメールに対する返信文と実際の心の中、どっちも本当。
嘘は言っていない。
ただすっかり恋愛体質になった彼が不安でかったるくて、キツいことも言ったけどさ。
暇だ暇だ、ピーピー鳴くんじゃねぇ!
あたしの毎日は、彼のためにある訳じゃない。
だから、このメールにはピンと来た。


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