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小悪魔と盲目なるワンコちゃん
【大人 恋愛小説】

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小悪魔と盲目なるワンコちゃん-8

「気持ちはありがたいけど、前からメールで言ったよね?プレゼントは好きじゃないって。彼氏彼女でもないけ〜、遠慮するよ」
「そんな高いものじゃないんです……」
「欲しい物は自分で買うよ」
「でも……」
「でもじゃない」
とりあえず見るだけにして、ショップ巡り。
あ〜やっぱり合わない。
ラブホも含め、この2日間で彼を知れば知るほど不愉快で、ストレスが溜まる一方。
特に、人の話を聞かずに口先だけの自己中はイタイ。
やっぱ、あのキスは失敗したな〜。
ちぇっ、自分の言動には自己責任でよろしく!
所謂、外見にのぼせているだけ。
所詮、欲望にのぼせているだけ。
彼があたしに盲目なほど、息が詰まって何もしゃべりたくない。
……帰りたいな〜。
ふと腕時計を確認したら、18時前。
今からバイバイすれば、帰りのバスに間に合うな。
もう限界だ。
視神経の奥で麻痺したような眩みが、ツゥ――ンと回り始める。
「ねぇ、もう帰らない?あたし疲れてるし、明日は仕事だからね」
笑顔を崩さずに、甘く計算された声で言ってみる。
近くまで来た出入口の、自動ドアの開閉ノイズですら心地よい誘惑だ。
そこを抜ければ、ほら、バス停留所。
自由への第一歩。
「え〜もう帰るんですか?まだ早いですよ〜」
「昨日も今日もこうして会えただけでも十分でしょ?だ・か・ら、またね。メールするから」
「……うん……」
やった!あともう一押し。
彼の悲しそうな顔は無視して。
「あなたもバスの時間があるし」
彼は駅へ、あたしは家へ、真反対方向のバスで帰る。
「……そうですね。でも、……ちょっとトイレ行ってきていいですか?すぐ戻りますから、バス停で待ってください」
「いいよ〜」
内心、小躍り。
あ〜これで帰れる!
疲れた疲れたぶりっ子はつらい、次の算段をしながら待つこと十数分。
あれ?
トイレにしては長すぎるな〜、彼。
18時半のバスに乗りたいのに、何やってんの?
Pセンター前のバス停留所付近で立ち尽くしながら、国道を走る車の群れをぼんやりと眺める。
すると、ようやく彼が戻ったかと思えば!
「はい!紫煌さん!」
とっても嬉しそうに、背中から差し出されたのは薄紫の花束と、さっきショップで似合うと彼が言った1000円サングラス。
……………。
……絶句。
よ、余計なことをして…。
せっかく人が頑張って割り勘に徹したり、いろいろ気遣ったりしたのに、よくも水の泡にしてくれたな!
「ありがとう。無理しなくてもよかったのに……」
「俺の気持ちです!」
いや、だから友達って。
「ちょっと聞いてもいい?」
「いいですよ」
「なんで、くれるの?」
予想だにしなかった質問なのか、彼が少し首を傾げて考えること数秒間。
「……お金を…遣い足りなかったから、です!」
その発想がすでに危ねぇよ!
「わかった、ありがとう。でも今回だけよ」
彼としちゃ男を上げたつもりになってるだろうけど、あたしには逆効果。
まぁ「好き」と言われるより、まだマシか。
花に罪はないからな。
―――と思ったら彼、またしても写メ!
「勝手に撮るなって!」
「だって紫煌さん可愛い……」
知るか!
激ギレ!
あたしは見せ物じゃねぇっつぅ〜〜のっ!
思いっきり叫びたいのに、この衆人環視ではままならない。


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