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小悪魔と盲目なるワンコちゃん
【大人 恋愛小説】

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小悪魔と盲目なるワンコちゃん-4

しかし、時すでに遅し。
晩飯に寄った喫茶店で、珍メニュー好きなあたしは『ラーメン雑炊』、彼は『カルビ丼定食』。
ふと気づけば、彼の箸があまりすすんでいない。
「ど〜したの?食べなよ」
「うん、でももうお腹いっぱい」
たったの2、3口で終わり?
「もったいない!こんなに残したら罰が当たるよ〜」
ちっちゃい頃から貧乏してきたせいか、ついつい古くさいことを言ってしまうあたし。
残すなら最初っから注文すんなよ〜、あたしならそうする。
「ん……、紫煌さんは食欲あるんですね?」
「だって腹減ったもん!もう20時だし、当たり前でしょ?」
ラーメン雑炊、んま〜〜っ!思ったよりキムチがぷりぷり効いてるし。
「そうですか。なんか緊張しませんか?俺なんかもう……紫煌さんと会ってるだけでもう、もう胸が……」
自分の心臓を、左手で押さえた彼に。
「あはは、何?胸がいっぱいだから、腹もいっぱいってこと?」
「そうです……」
マジかよ?
うわ〜イタイな〜〜。
すっかりホの字になってるよ、彼!
やっぱ好きなのに、無理矢理『友達』レベルで止めちゃったのが仇になったとか?
それとも、あの曲の「キスしよう」でおかしな気分になったとか?
目線ちらり。
止〜〜め〜〜て〜〜ぇ〜〜
いやいやいやいやいや、無理無理無理無理無理!
えっちも死んでもお断り!
友達以下でよろしく!
頼むよっ!
頑張ってこらえて!
ブスとかハンサムとかの以前に、やっぱ告られた時点で断ればよかったかも?
だけど、この歳になると何でも「もったいない」と思っちゃうんだよね〜。
とりあえず「キープしとこ」みたいな。
ん〜…ま、しばし保留だ。


鬱々な気分で喫茶店を出たところ、いきなり彼の携帯に写メられた。
「何やってんのよ!?」
「いや、紫煌さん可愛いから記念に……」
「だからと言って、人に断りもなく撮っていい訳?失礼ねっ!」
携帯をはたく。
「しまいなさいっ!」
ショボ―――ンと携帯をポケットにしまう彼に、ますます不信感。
何なん?
ここまで無神経とは思わなかった!
あ〜〜もう面倒臭い面倒臭い面倒臭い面倒臭い面倒臭い……
帰りたい。


……と言っても、簡単には帰らせてくれなかったけどね。
あちこち人気のないところを、勝手に寄り道しては車を止める。
一人暮らしの彼は、アパートへ戻っても淋しいだけだから、もう少し一緒にいてと。
だけど、会話もない。
運転席の彼、助手席のあたし、ただ並んで座っているだけ。
「眠いですか?」
「眠いよ」
わかってんなら、さっさと送ればいいのに気がきかないな〜。
こ〜ゆ〜タイプの男、嫌い。
やっぱ女兄弟がいないと、こんな時の女の気持ちを汲もうとせず自己中に走っちゃうんだよね。
朝の9時、いや正確に言えば9時35分から現在22時前。


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