光の風 〈貴未篇〉後編-3
「はぁっ!しんどかったー!」
目の前に辿り着き、永は膝に手をついて全身で疲れを訴えた。貴未は笑い、永の背中をぽんぽんと叩いた。
深呼吸を数回して、勢いよく顔を上げる。ばちっと目が合ったマチェリラに笑いかけた。
「こんにちは!」
「こんにちは。」
永の勢いにつられて、とまどいながらもマチェリラは挨拶を返した。
やがて永の表情が変わる。マチェリラの手元には貴未のハンカチ、永と貴未は顔を合わせた。
そして永はマチェリラのハンカチを持っている方の手を取り、彼女の頬にあてさせた。
永は優しく笑う。
「涙。」
その瞬間、マチェリラは初めて自分が泣いていることに気付いた。貴未と話して止まっていた涙が再び溢れだす。
目の前にいる二人は間違いない、あの時の子供だとマチェリラは確信していた。
あれから何年もの月日が経っている、マチェリラ自身何回も姿を変えて人生を過ごしてきた。しかし彼らはあれから少ししか成長を遂げていない。その速度はマチェリラと似ていた。
また出会えた事は運命だろうか?
嬉しさから涙が止まらない。
「私は永、彼は貴未。あなたの名前は?」
涙を流すマチェリラに永は優しく声をかけた。涙で声が震える、マチェリラは深呼吸をして答えた。
「マチェリラ。」
それは遠い昔に捨てた名前。自分の本当の名前を久しぶりに口にした。
「マチェリラ?綺麗な名前!」
今のマチェリラと貴未、永は同じくらいの年齢だった。それが余計に親近感をよんだのだろう、未だ涙が止まらないマチェリラを永は優しく抱きしめた。
背中に手をまわし、ゆっくりと優しくぽんぽんと叩いてやる。まるで大丈夫と守るように温かい心が伝わるようだった。
マチェリラは同じ様に背中に手をまわし、しっかりと永の体温を感じとった。救われたような開放感、それが二人との二回目の出会いだった。
それから三人は何度も会い、交流を深めていった。やがて二人からカリオの話を聞かされる。
二人は調査の為にここに来ていること。二人揃わないと空間を飛ぶ力を発揮出来ないこと。カリオは秘密の世界ということ。
やがて二人との別れがやってきた。寂しいけれど仕方がない事、マチェリラは笑って二人を見送った。
そして、あの事故が起きる。