「懐かしい思い出は、つながらないよね」-1
幼稚園から知っている勇。アタシが、高校生になって、同級生で近所の公園で話していたときのことを今でも、覚えている。
勇以外にも、その場所には、男の子はたくさんいて、そのうちの一人は、アタシの親友に、付き合えだのしつこく言っていたので、その場の雰囲気で、勇も「おれも、お前と明日に、結婚しるもんな〜」なんて言ってきた。
それに、釣られてアタシも、「な〜?」なんて言って笑いあっていた。
勇がそんなこと言うと、それまで意識なんかしてなかったのに、アタシの中で、今までの仲じゃない目で勇を見るようになった。でも、確かに言われて、嬉しい気持ちだった。
9月になったら、アタシの地域は、だんぢりがある。勇は、鳴り物担当で、笛を吹いている。そんな、一生懸命に吹く勇を観て、カメラにでも撮りたくなった。でも、カメラを撮ることに、勇気がなかったから、結局できなかった。なぜだろう・・・
好きなんだって気付いたのは、その頃だった。
高校の頃は、会えば普通に話したり冗談も言うのがアタシ達の仲だった。
しばらく高校に入り、たまに会う機会が増えた。
アタシも勇もその頃は、部活を終えて変える時間が同じになるため、よく一緒に帰った。
たまたま、アタシは、駅から歩いて帰ることになったある日、そんな帰り道に、勇は現れた。
「乗れよ」
と勇は、薦めてくれたけど、恥かしさのあまりに、
「重いからいいよ」と言いながら、自転車の横を歩いて帰ることにした。
なんだか悪い気がしたものの、気の利いたことも言えないから、この際だから、ネタも切れてきたし、勇気を出して、彼女がるか聞いてみた。
「まぁな?もう1年弱になるねん」嬉しそうに答える勇。
勇から長い間付き合っている彼女がいると聞いたもんだから、アタシは、軽い嫉妬と寂しい気持ちになった。
携帯番号でも、聞いてその彼女と別れた頃に、アタシとまた近くで冗談を言いあえるようになりたい。
でも、勇の今の幸せを壊すまでして、勇との距離を縮めることはできないと思ったからなのか、
携帯番号もメールアドレスも聞かなかった。
丁度、アタシは、彼氏とも別れたところだったから、何度もあの時聞けばよかったかな・・・後悔した。
勇は、楽しそうに、彼女の話をしたのが、帰ってからも、アタシの頭の中を何回もグルグル回避させては、アタシを後悔させた。
その当時付き合ったアタシの経験のように、勇の今の彼女もただの通過点だったらいいのに・・・
心で想う気持ちは素直だった。なのに、アタシは、勇に対してこんなにもセーブをかけているこれがアタシの実力と運のなさなのかと思うと無謀にも、何もできない自分が、悔しくなった。仕方ない。アタシにとっては、最高のチャンスであっても、勇にとっては、ただの再開にしかないんだと言いきかせて。