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中嶋幸司奮闘記
【コメディ 恋愛小説】

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中嶋幸司奮闘記-7

そんな事があってから一時間後。
俺は美弥ちゃんと柊に協力する時間を作る為、我がサッカー部の部室にいた。
「おいっ! もう一回言ってみろ幸司!!」
「だぁ〜かぁ〜らぁ〜、ちょっとの間、部活の指揮をお前に頼むって言ってんだろ。副キャプテン」
「ふっざけんなよお前! 頼むからもうちょっとキャプテンの自覚を持ってくれよ。いきなり前触れもなく部活を休むってどういう事だよ」
俺の目も前で今にも唾を飛ばさん勢いで抗議する副キャプテンの前田。
こいつは俺よりも部活の舵取りが上手いのだが、いかんせん融通が利かない堅物だ。
しかし、そんな堅物故に俺には扱いやすい部分もあって、適当に前田を丸め込むと早々に部室を後にする俺だった。
「中嶋キャプテン……しばらく部活を休むって本当ですか?」
部室を出ると、秋兎が心配そうな顔で尋ねてきた。
「まあ、ちょ〜っと外せない用事が出来たんでな。その代わり、俺が居ないからってお前も部活の手を抜くんじゃねーぞ!」
わしゃわしゃと意識して乱暴に秋兎の頭を撫でる俺だったが、当の秋兎はなんか嬉しそうな顔をしていた。
しかもこいつ、心なしか顔が赤くなってないか……?
ま、まさかね……あ、あはは……。

こうして俺は美弥ちゃんの周囲で起こっている不審な出来事を解決すべく動き出したのだが、最初の一週間は学園内も平穏で色々と調べて回っていても特に異変はなかった。
「なあ、幸司。柊や藤崎の様子はどうなんだ?」
午後の体育の準備の為、体育倉庫にサッカーボールを取りに行く途中に圭介が話しかけてきた。
「まあ、二人とも平然とした顔はしてるけど、精神的には少し参ってるようだな……」
「……そっか……あ、俺や香織に手伝える事があったら遠慮しないで言ってくれよな」
心配してくれているのだろう圭介がそんな事を言ってくれるのはありがたいのだが、これは俺の男としての問題もあるからいざって時は頼む程度の返事をしておいた。
あまり俺の活躍の場を取られるのもなんだからねぇ。
こうして圭介とのほほんと会話をしながらグラウンドに向かっているとどこからか聞き慣れた声の女の子の悲鳴が聞こえてきた。

愛那だっ!!

俺は持っていたサッカーボールを圭介に押し付けると、全力で悲鳴の聞こえてきた方へ駆け出した。
悲鳴の聞こえた場所はそう遠くはない。
俺は最悪の事態にならない事を祈りながら土足のまま校舎に駆け込み更に加速をする。
すると、廊下にへたり込んでいる愛那を見つけた。
「愛那っ! どうしたっ!?」
「な……中嶋せんぱぁい……ふ、ふえええっ」
余程怖い思いをしたのか、駆けつけた俺に愛那は抱きつくとわんわん泣き出した。
いくら授業中とはいえ、愛那がこんな悲鳴を上げたんだからすぐに人が来ると思った俺はまだ泣いている愛那を抱きかかえると速攻でこの場を離れ、校舎の外にあるサッカー部の部室へと急いだのだった。
まあ、本来なら後ろめたい事がないからそのままでもよかったんだけど、何故か心のどこかに引っ掛かりがあってこんな行動にでたのである。
当の愛那は校舎を出るまでは訳も分からずって感じでいたけど、外に出る頃には落ち着いてきたのかとっても嬉しそうな顔で俺の首に腕を回してきた。
こいつ、こんな時に一体何を考えてるんだろうね……。
俺としては役得なのかな? ま、小さくても可愛い女の子だしねぇ。
だけどいつもの愛那を見てる俺にとっては恋愛対象の女の子ってより、近所の小さい子供って感じだから役得感はいまいちってところだった。

そんなこんなで俺は愛那を部室へ連れて来ると側にあったパイプ椅子に座らせ、俺は部室の窓を開け男臭い空気で充満してる部室の換気をする。
「ちょっとは落ち着いたか?」
「……うん。でもまた違う意味で落ち着かなくなっちゃった……」
俺の言葉に答えた愛那は顔を赤くして俯きがちに俺の顔を見ていた。
か……可愛いじゃねーかっ!
いや、ちょっと待て、俺!
確かに愛那は可愛いぞ。でも、この子はどう見ても恋愛対象って子じゃないぞっ。


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